【2023新春 宿泊4団体トップインタビュー】全旅連 会長 多田計介氏


全旅連 会長 多田計介氏

コロナ対策要望を引き続き推進 地位向上へ業界の魅力アピール

 ――2022年を振り返ると。

 旅行需要の拡大へ、Go Toトラベルに匹敵する事業を行ってほしいと業界が声を上げ、全旅連もそのことを言い続けてきた。そして10月11日、県民割、ブロック割からつながる全国旅行支援がスタートした。

 一つの進展が図られたが、今の予算規模では短命になるだろうと、延長の予算を付けてほしいと言い続けているところだ。

 もう一つの明るい話題はインバウンド。水際対策が少しずつ緩和されている。

 首相はG7並みの水際対策緩和を行うと言い続けてきたが、結果的に他国と比べ緩和が遅れた。ほかのG7諸国と比べて日本の感染状況がどうだったのか。そして対応が適切だったのか。検証する必要がある。

 マスコミの責任が大きい。相変わらず感染者数ばかりを追い続け、旅行との因果関係に言及する。旅行によって感染者が増えるというエビデンスがどこにもないにも関わらずだ。感染者数を毎日、毎日報道する必要があるのだろうか。ウイルスが弱毒性になった現在、考える必要がある。

 全国旅行支援が始まると「便乗値上げをした」等の報道もなされた。今まではお客さまが来ないのだから値下げせざるを得なかった。それを元の値段に戻しただけ、というところが多いはず。需要が多ければ値段が上がり、なければ下がるという経済の原理原則ではないか。話題性があるから面白おかしく取り上げるのだろうが、的を射ていないことが多すぎる。

 金融関係では、ゼロ・ゼロ融資の返済が始まりだしている。しかし、お客さまがコロナ以前には戻っていない。そのような中においては徳政令のような割引、長期にわたる枠組みの変更のようなものがあっていいのではないか。借り入れの全てを棒引きにするのは難しいかもしれないが、何%かを免除するなど、何らかの策を考えていただければありがたい。われわれの業界には飲食店に出された営業補償金はなかったのだ。

 観光庁の「地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業」は1500億円に予算が上積みされるとともに、年度をまたいでの事業にも対応するなど弾力的な運用となった。これについてはわれわれ業界の声をくんでいただき、非常に良かった。

 中央の観光産業振興議員連盟の先生方、そして都道府県の観光産業振興議員連盟の先生方、双方に声を掛け、運動したことの成果だ。

 コロナ対応の予算はこれで打ち切りとの政府の声もあるようだが、伸びしろがある観光業界に対する支援という意味で、コロナがなくなっても高付加価値化、世界に通用する観光地にするための支援は続けるべきだ。

 コロナ禍だからこそ見えた問題がある。しっかりと検証して、将来につなげたい。

 

 ――旅館業法の改正案が閣議決定された。国会での年内の審議、成立はならなかったが、次の通常国会での成立が見込まれる。

 新型コロナなど感染症の流行下で、感染の疑いがあるお客さまに医療機関で受診してもらったり、感染していないことを証明してもらったりすることを旅館・ホテル側で促し、拒否するお客さまの宿泊を断ることができるようになる。今まで、宿泊拒否ができるのは、伝染性の病に明らかにかかっている場合に限られていたから、お客さまと従業員の安全性を考えた上で一歩進んだ形となった。

 既に宿泊拒否については、ほかのお客さまや従業員に迷惑をかけるような人も適用されている。われわれは理不尽なクレーマーに悩まされる場合があり、これに我慢をする必要はない。

 ただ、やみくもに宿泊拒否をするようなことではない。お客さまには常に微熱があるなど持病をお持ちの方もいらっしゃる。法律の改正案では、人権等についての研修を従業員に受けさせることが努力義務となっている。われわれはしっかりと対応しなければならない。

 

 ――2023年の展望。全国旅行支援が始まり、水際対策が緩和されるなど、業界にもようやく明るさが見え始め、また一般社会活動も同様だが、乗り越えるべき課題も多い。

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