デジタル化が課題
われわれの業界は、コロナ禍で本当に厳しい状況に追い込まれた。髙橋(広行)前社長が「黄金の時」と呼んでいた年が、このようになるとは誰も想像できなかった。多くの会員が4月、5月は全館休業を余儀なくされ、大変残念なことだが、廃業された仲間もいる。また、九州では今年も大雨による災害が発生し、多くの会員が被災された。
このような厳しい環境下で旅ホ連としても、大規模な危機対応の予算を組んだ。JTBには協業でリカバリー策をお願いしたが、大変素早い対応で、各地域での施策にご協力いただいた。全国規模で取り組んだ社員向け宿泊研修や「泊まって応援割引」といった施策でも大きな成果を上げることができた。
GoToトラベルキャンペーンがスタートして以来、ようやくわれわれの業界にも光が差し、回復の兆しが見えている。特に東京発着の旅行が追加になった後は、JTBでは大変な勢いで販売が伸びている。10月からダイナミックパッケージの機能強化が行われており、足付きの販売というJTBの強みが大いに発揮された証ではないか。
旅ホ連ではJTBとの協業施策として、ダイナミックパッケージ「MySTYLE」の利用限定クーポンや、団体向けのソーシャルディスタンス施策など、相乗効果を生み出すような取り組みを行ってきた。
しかしながら現実には、都市部のホテルやリゾートの大規模施設などではなかなか数字が伸びず、大変厳しい状況が続いている。回復の度合いには会員間でもかなりの差があり、手放しでは喜べない状況が続いている。
加えて、すでに表面化してきているが、GoToトラベルキャンペーンが来年1月末に終了するかもしれないという中で、2月の予約がまったく入ってこない。こうした反動に対して、業界としてもさまざまな陳情を行っているが、旅ホ連としてもJTBと組んで知恵を出し合い、この難局を乗り切っていきたい。
JTBは今年度、山北新体制となった。「新交流創造ビジョン」において、新たな事業戦略の推進とコロナ禍を乗り切る改革の加速が進んでいる。特に、コロナ禍によって加速したデジタル化への対応は、私ども宿泊業界においても喫緊の重要な課題だ。デジタルを活用することでワーケーションやハイブリッド型MICEなどの旅行の新たな可能性も広がってきた。
われわれの業界はデジタル化で遅れ、労働生産性が低いということもいわれている。DX(デジタル・トランスフォーメーション)など、先進分野に積極的に取り組んでいかないと、次の時代の旅行マーケットについていけない。そのような危機感を持ち、アンテナを高くし、流れに乗っていけるよう皆で努力していきたい。JTBのパートナーとして宿泊増売を目指すためにも、JTBが進める事業戦略を十分に理解、共有し、改革に乗り遅れないようにしたい。
かねてより検討してきた理事会運営については、事務的、手続き的なことはできるだけ簡略化して、会員、理事がより関心を持てるような内容にしようという改革を模索している。例えば、今年度から旅ホ連とJTBの協業によって「ならではの価値」を作り出すコンテンツ開発に取り組んでいるが、そうした取り組みの先行事例、成功事例などを理事会で共有していきたい。
また、JTBはツーリズム・プラットフォーム(TPF)の構築に取り組んでいる。旅ナカにおける新たな仕組みづくりであり、観光地の活性化につながるものとして注目している。私の思い入れでもあるが、TPFは旅を変えるのではないか、いや旅を変えるものにしなければならない、と考えている。地域に根差しているわれわれ旅ホ連が最も力を発揮できる分野、最もJTBに協力できる分野だと考えており、積極的に関与し、協力していきたい。
最後になるが、コロナが収束しても元には戻らない、と覚悟してやっていかなければならない。つまり、同じやり方ではやっていけない。例えば、おそらく稼働についても、今までのような100%稼働ではなく、7割、8割という稼働の中で、しっかり利益を確保して経営を存続させる。そういう改革をわれわれ自身は進めていく必要がある。
JTB旅ホ連は、今年度の事業計画にも掲げているように、守る姿勢だけではなく、新しい時代に積極的に自らを変えていく。ウィズコロナ、アフターコロナの時代には、さまざまな苦難が襲ってくる。ワクチン開発などの希望もあるが、インフルエンザのように変異を続けながらウィズコロナの時代が続くかもしれない。何が新たな脅威として発生するか分からない。そういう脅威に対し、われわれ自身がしっかり準備していかなければならない。JTBのお力添えをいただきながら、会員同士が一致団結して山積する課題を乗り切っていきたい。
JTB旅ホ連 大西雅之会長