「世界一の観光地」に向け深堀りを
本年3月24日にG7広島サミットを契機とした「せとうち」(ひらがなのせとうちは海・島だけでなく里山や川も表現)の周遊促進のため、国内外のメディア関係者を対象に「せとうち7サミット」を開催した。第1部はアレックス・カー氏による基調講演と7県知事によるプレゼンテーション、第2部は広島県のご協力により地元の食材を使った夕食交流会を行い、大阪・関西万博のマスコット「ミャクミャク」にも広島まで出張いただいた。
基調講演では「世界の瀬戸内海」と題して、エーゲ海・アドリア海と並び世界に三つしかない内海である瀬戸内海の魅力を語っていただいた。海が穏やか・島が多い・文化と歴史が豊富・クルージングに適している、などなど。一方で課題として、景観保全・SDGs・宿泊施設・海の交通・オーバーツーリズムなどについて、関係者はさらに意識する必要があるとの示唆であった。カー氏はアメリカ生まれ、1964年初来日、1973年徳島県三好市祖谷にて「ちいおり」購入後40軒以上の古民家再生を手掛けており、外から目線で日本の魅力にはまった方。
5月19日にサミット休暇をとって祖谷の古民家の一つ「天一方」に宿泊させていただいた。落合集落の山の斜面に張り付くように民家や畑があり今も人々の生活が営まれている。夕食は地元のおばさんが野菜をたくさん持ってきてくれて、男4人が明るいうちから飲み始めている横で次々と料理を作ってくれた。宿や景色の素晴らしさもさることながら、地元の人が生き生きと私たちのために手料理をふるまってくれたことに感動した。「外国人も多いですよね」と尋ねたら、手振り素振りで「問題ないよ~(笑い)」と頼もしい答えが返ってきた。そういえば萩焼窯元のお姉さんや三津の渡しの船頭さんも同じアクションだったことを思い出した。外国人に対する苦手意識とは無縁の世界、自分たちの暮らし、文化、歴史に対する誇りと自信を感じた。
私自身は今まで40カ国を訪問し、うち5カ国には通算10年以上暮らし、日本に帰国して10年になる。この地に縁のなかった私が外から目線で「せとうち」の魅力にはまっている。
一方でまだまだ「世界でここにしかない魅力」を伝えきれていないもどかしさがある。「せとうち」のブランドコンセプトである「AUTHENTIC JAPAN‥SETOUCHI」の深掘りが今年度の課題である。観光庁の「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり事業」で「せとうち」がモデル観光地に選ばれた。10年後に世界一の観光地になるべく、7県・47市町・関係者の皆さんと「せとうち」の魅力の深掘りを始めたところである。
せとうち観光推進機構 専務理事・事業本部長 坂元 浩氏