観光の国際認証の現場で
昨年10月からオランダの国際認証機関グリーンデスティネーションズの日本代理店の立場となり、国内の観光地の皆さまに国際認証について話をする場面が多くなった。
私どもで扱っているのは、GSTC(世界持続可能な観光協議会)認証と呼ばれるもので、言ってみれば、「観光が環境や住民生活に悪影響を与えていないかどうか」を確認する観光地のサステナブルISO認証のようなものだ。
世界でシンガポールやコロラドのヴェイルなど41の観光地が「認証」を取得しており、日本では、「認証」の前段階の「表彰」を釜石市とニセコ町が取得している。今年はさらに三つの観光地が「認証」を目指し、グリーンデスティネーションズに入会した。
仮に、日本に千の観光地があるとしたら、取り組んでいるのは、まだ五つなので、「超アーリーアダプター」ということとなる。
ただ、「表彰」を受けている観光地の7割以上がヨーロッパの観光地で、お隣の台湾でも、3観光地にとどまっており、世界的にも「若い」認証制度である。
観光地のDMOや観光協会の皆さまに、まだ聞きなれない認証制度の説明は難しい。当然、「これに取り組むメリットはなんですか?」と聞かれる。
答え方としては、「サステナブルに取り組んでない観光地は旅行者から見捨てられる」という言い方もあるのだが、私は最近「取るだけでは何の効果もありません」と答えている。「国際的な第三者機関から「あなたはサステナブル」という保証を得た事実だけです」。
認証取得までは早くても4~5年はかかる。一つの景勝地や温泉が認証を取得しても単体でPRし、すぐにお客さまを呼ぶのは難しい。
広域DMOや県などがサステナブルな観光エリアとなることを決意し、「認証」に取り組む域内観光地の取り組みをプロモーションや人材育成面で支えていく。
地道に努力を重ね、さらに4~5年要し、ブランディングがなされ、世界中から良質で高単価のインバウンド客がたくさんやってくる状況が生まれる。
気の長い話のようだが、先進地と言われるスロベニアやフィンランドといったエリアもこうした軌跡をたどっている。
その過程で、フィンランドのポジオのような無名の観光地が第三者機関から評価され、サステナブルにとがった「観光地」に成長していく。
そして、あるエリアがサステナブルツーリズムの先進地としての地位を確立した時、他が追いつこうとしても、そこから10年かかるのだ。
サステナビリティ・コーディネーター協会(JaSCA)代表理事 青木真郎氏