【VOICE】ユニバーサルツーリズム 有限会社わくわく(長野県飯田市)代表取締役 中山陽平氏


有限会社わくわく(長野県飯田市)代表取締役 中山陽平氏

旅行が前向きな目標に

 私自身の旅行体験を振り返ると、家族の旅行が決まると、妻はワクワクしながら、どこを観光しよう、何を食べようと、計画に没頭している姿が思い浮かびます。楽しそうだなとうれしくなるものです。一方の私は、乗り物から見る景色が旅行の楽しみの一つです。

 さて、私は介護の会社の社長で、要介護者の旅行支援事業を行っています。その中で、高齢者や身体が不自由な人にとって、旅行とはどういった意味を持つのか疑問をもち、友人に依頼し、温泉旅行が高齢者や要介護者にどのような影響を与えるかを調査してもらったことがあります。

 その調査結果から、特に印象的だった二つのポイントを紹介します。まず一つ目は、人それぞれが旅行から何を楽しみにしているかは大いに異なる、ということ。当たり前のことかもしれませんが、旅行中の服装選びが楽しみだったり、おいしい食事を楽しみにしていたり、同行者との会話が楽しみだったり、本当に楽しみ方は千差万別です。しかし、当たり前のことだと分かっていながら、私自身が「要介護者」や「高齢者」というカテゴリーで一括りに考えがちだという事実に気づかされました。実際には、一人一人が独特の感受性や個性を持つお客さまであり、その人ならではのニーズに対応する必要があることを痛感しました。

 二つ目のポイントは、旅行がもたらす前向きな効果が長続きするということ。これもまた、言われてみれば当たり前のことです。私たちも、旅行の計画が立つと、その日まで毎日ワクワク感に包まれながら生活しているわけですから。同様に、要介護者にとっても、「〇月〇日に旅行に行く」という明確な目的が日々の生活に弾みを与え、前向きな活力を引き出すのです。「家族に迷惑をかけないように健康でいたい」という目標は、介護者や高齢者の間でよく見られます。しかし、この思考でうまくいくでしょうか? 無理に元気でいるような強制感は、日々の生活に豊かさをもたらすものではありません。一方で、旅行を計画すると、全く異なる目標が生まれます。「楽しむために健康を維持しよう」「友人にお土産を渡せるようにしよう」「温泉に入るために足の筋力をつけよう」。明るく前向きな目標です。やりたいことに向かう人のそばにいられることは、僕らにとってもかけがえのない時間です。介護の仕事における意義を再確認させてくれます。

 旅行は、その一時的な体験を超えて、「人生」にエネルギーを注入する力を持っています。旅行支援の経験から、この文章を読んでいる旅行関係者の皆さまに、旅行には人々を前向きにできるという視点があることをぜひ知っていただきたいです。

 
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