
草津観光公社 常務 堀田洋一氏
草津ブランドとは
草津温泉(群馬県吾妻郡草津町)は、1800年余りの歴史を有する温泉地。毎分4千リットルの湯が湧出し、湯滝となって流れている「湯畑」は至高の価値を演出する。
温泉街の魅力は、「湯もみ」や「伝統湯」など温泉文化を体感できる場があり、伝統工法を用いた木造の建物が軒を連ねる風情と情緒あふれる路地がある。草津温泉を訪れる来訪者がそぞろ歩きを楽しみ、昼夜も観光客でにぎわう、そんな特別な場所である。
また、草津温泉の空間は2009年からの地域住民、行政が一丸で取り組んだ景観まちづくりが成果を結んだものだ。そのきっかけは町が行った湯畑整備事業である。「御座之湯」「湯路広場」「熱乃湯」再建の整備は草津温泉が発展してきた歴史の変遷を表現するものであり、100年先を見据えてのまちづくりを念頭にしての事業である。
町の経済発展の鍵となる湯畑整備事業の成功は、草津温泉の景観を見直すきっかけとなり、町と住民が協力して行う「街なみ環境整備事業」がスタートし、官民協働のまちづくりの礎となっているのである。
新型コロナウイルスは世界中に不安と恐怖を植え付けていった。いつまた拡散するかわからない不安の中で、湯畑には多くの若者や50歳代以降のご夫婦が、伝統と流行の狭間で非日常を楽しんでいる。町の中には瀟洒(しょうしゃ)な旅館も増えて、1泊3万円を超えるところも少なくない。
果たして何がそこまで、人々を草津温泉に引き付けるのだろうか。
圧倒的な泉質の良さもあるだろうし、「街並み整備事業」によるおしゃれなまち並みもある。他の温泉地でも同様な取り組みは行われているにもかかわらず、草津温泉はただそれだけでは終わらない。何かが違うのだ。
私たちがブランド品を手にしたときに感じる熱意というか、デザイナーの感性と意志に貫かれた「かっこいい空間」「癒やされる時間」があるのではないか。
2001年、弊社は民営化し、草津観光公社として再出発した。マーケティングをスピーディーに展開し、民間企業としてプロモーション活動を行っていくことを約束した。
親会社は草津町であり、その運営に際しては草津温泉発展の一躍を担う点で協働していくパートナーでもある。両者がビジョンを共有し、それぞれが将来に向けた役割を果たすことが草津温泉の価値を向上させ、維持させることに他ならないと肝に銘じて、常に進化する観光地草津温泉ブランドを目指していきたい。