温泉地滞在で「より健康に」
2020年初頭から本格化した新型コロナウイルス感染症との戦いが始まって早や1年9カ月、観光業界人にとって豊かであったはずの時は、奇しくも業界の将来を考える試練の時となってしまいました。8月16日付内閣府発表の4~6月期の国内総生産(GDP)は対前期比0.3%と小幅な成長に留まっています。景気先行指標は設備投資が1.7%と2期ぶりプラスを記録するなど、製造業を中心に回復期を見据えた動きを見せている半面、どうしても楽観的になれないのが飲食や観光に携わる関係者です。
観光業は不特定多数のお客さまを対象とする性格上、残念ながらウイルスとの戦いは他業種よりも長くなることが想定されます。つまりアフターコロナではなく、ウィズコロナでの事業の進め方が課題です。過去に学べばペストやスペイン風邪など、人類は歴史上さまざまなウイルスと戦ってきています。日本が諸外国と比較して新型コロナウイルスの感染度合いが低いのは、風通しの良い和式建築と水資源豊富な環境による衛生観念、加えて滋味あふれる和食文化や健康効果が高い入浴などの生活習慣に起因していると言ってもあながち言い過ぎではないと思います。
ところで、先般、環境省は全国「新・湯治」効果測定調査プロジェクトの3カ年にわたる調査結果を公表しました。それによりますと、第1に温泉地滞在後は心身に良い結果が得られたこと、第2にお湯に浸かるだけでなく軽い運動などを行うとより良い心身への影響があること、第3に長期滞在ではなくても日帰りなどの短期間かつ複数回訪れることにより、心身への良い効果がもたらされることと報告されています。特に温泉地訪問回数と心身の主観的変化の関連性で、「より健康を感じるようになった」と回答した割合は年6回以上した人が82.7%と高い療養効果を示しています。
古くは主に疾病治療を目的とした湯治文化でしたが、現代では未病対策の分野で気分をリフレッシュする効果もあります。第4次産業革命の最中、5Gなどの高速無線環境の整備も進み、いつでもどこでも仕事や余暇活動が自由にできる状況下、ストレスフリーの観光地での滞在はこの上ないものです。
入浴には温熱作用、静水圧作用、浮力作用、清浄作用が働くことが実証されています。さらに運動療法効果を加えることにより、より活き活きとした旅行体験となるはずです。医療による取り組みと共に入浴文化を広める取り組みを強化して、人流促進に向けた明るい世の中の到来を心から待ちたいと思います。
石田氏