本物を感じるコンテンツ造成、心に響くプロモーションを
農泊のスタートは、2017年度にそれまでの生きがいづくりに重点を置いた「グリーンツーリズム」から、自立的な運営を目指す「農泊」に移行した時に遡る。同じ年に策定された観光立国推進基本計画において「農山漁村滞在型旅行をビジネスとして実施できる体制を持った地域を2020年までに500地域創出」との目標が設定され、関係者の取り組みの効果もあって、現在は600を超える地域が国の事業に採択されて、目標を達成している。
また、農林水産省における令和3年6月の新たな農村政策のあり方の中間とりまとめとして、持続可能な農村を創造するため、農泊等をきっかけとして農業・農村に関わる人口、いわゆる「農的関係人口」の拡大を図る必要性が示された。
これに対し、時期は前後するが、令和元年に農泊そのもののあり方を検討した際、その中間とりまとめとして、宿泊施設、食事、体験コンテンツの質、量面での充実、さまざまなツールを活用した情報発信による利用者の利便性の向上、受け入れ態勢の強化などが必要との見解が示された。
その後、新型コロナウイルスの感染拡大により、一般の旅行同様、農泊でも利用者が大きく減少し、活動を休止中の地域も少なからずある中、コロナ後の国内観光・インバウンド需要の回復を見据えた効果的な取り組みが必要な時期に来ている。
当省では、本年7月に観光関係の有識者を中心とした「多様な地域資源の更なる活用に関する農泊推進研究会」を設置し、農泊と観光の連携について課題、今後の方向性などを議論している。
これまでの2回の研究会では、農泊コンテンツとして、オーガニック、SDGsなど、今後の展開が期待されるテーマのほか、泊・食・体験を通じてその地域の歴史、文化などが分かるストーリー性や、その時、そこでしか体験できないなどの特殊性、限定性が重要との意見があった。
次回は来年2月頃にウェビナーでリアルタイム視聴可能な形式で開催し、今年度の意見の集約等を行う予定であり、本紙読者をはじめ農泊と観光の連携について関心のある方はぜひご覧いただきたい。
今後もさまざまな関係者の意見を聞きながら、コロナ後の新たな旅行スタイルや観光需要をとらえ、可能性を秘めた農泊の新たな方向性として、通常の旅行とは異なる、そこにある物語、その時、その場所でしか味わえない、本物の泊・食・体験コンテンツの開発や心に響くプロモーションを考えていきたい。
米田氏