
嬉野観光ホテル大正屋 取締役副社長 山口 剛氏
休館を人材確保の契機に
昨年度9月23日、ここ嬉野市に念願のJRの駅ができました。しかも在来線でなくいきなりの新幹線駅!
皆さまご存じの通りその名も「西九州新幹線」。現在までのところ、お隣の温泉地武雄温泉駅から長崎駅までの66キロの部分開業で、始発の武雄温泉駅より終点の長崎駅まで28分と日本一短い新幹線が開業致しました。駅ができる前は、最寄りの駅といえば車で30分の武雄温泉駅、車で20分の肥前鹿島駅。嬉野市民にとっては両駅まで行かないと電車に乗ることができませんでした。嬉野市民にとっては100年越しの念願の駅が完成致しました。
9月の新幹線開業と10月からの全国旅行支援。このダブル効果もあり、嬉野温泉は大変にぎわいを取り戻しております。
この大盛況の中で問題が起こっております。人手不足です。お客さまはコロナ前のように戻ってきているものの、旅館サイドがお客さまの数に付いていけず、予約受け付けを制限している施設もあります。既存のスタッフの雇用確保と新規採用対策として、嬉野観光ホテル大正屋グループ(大正屋・椎葉山荘・湯宿清流・湯豆腐本舗)は「10日間の連続休館日導入」を決断致しました。
昨年以来の忙しさの中でも有給休暇の消化をしなければならない状況。本当にスタッフの日々のやりくりが大変でした。これをどう解決しようかと日々考えておりました。
スタッフ側から見ると旅館業というのは、(1)人が休んでいる時に働かないといけない(2)祝祭日、土、日曜日は休めない(3)連休を取りづらい(4)勤務が不規則―等、数えたらきりがないほどで、労働環境が整った業種とは言えません。
年間を通じて各館の閑散期を調べ、10日間の連続休館日を設定しました。同じ町内でも各施設が離れているため、スタッフの交流という観点では同じ期間に設定したかったのですが、椎葉山荘と大正屋、清流、湯豆腐本舗の日程をずらしたのは、大正屋グループへのご宿泊を希望されているお客さまに選択肢を持ってもらうためです。
連続10日間で休館することに伴い、働き方改革の一環として、日頃家族とゆっくりできない状況も解消でき、福利厚生の一環として海外、国内、日帰りの各旅行も設定しました。これはスタッフのモチベーション、会社への愛着心アップが狙いでした。
しかし、実際10日間の休館は会社にとっては死活問題。大正屋だけの昨年同時期の売り上げを見ても、10日間で約1億8千万円の収入が入ってこないことになるのですが、この売り上げよりもスタッフの方が大事だと判断しました。これらの動きが、旅館として一番大事な人材確保につながることを期待しています。