旅に準備する「余裕」、旅がくれる余裕
旅づくりで顧客満足を重視してきたが、「準備された顧客ニーズからリクエストされたウォント」に代わり、「個々に計画されたインタレストの実現」へと変化してきた。行って見てくる事実からこだわりに、そして事前に多くの情報、知識があり、それらの確認と新たな発見が、より多くの満足を生む傾向にある。満足を感じる要素として、次の四つの「目的」が必要である。
(1)最初は当然、「主な目的」の達成感
(2)次は、ついでにできること、ついでにすること、などの異文化感
(3)三つ目が 自分だけと感じさせられる経験、体験の差別感
(4)最後に、「余裕」の選択が生む満足感(時間、お金、体、心など)
主目的の達成感はもちろん、旅行の良し悪し、ついでにできることの充実、それが主目的の達成感をより高め、旅の評価を上げる。三つ目は「私だけの出来事」と感じさせる独自性、計画外など含む、オリジナル体験である。最後の決め手は、余裕。いろいろ予定外の出来事が起こった時、余裕がそれらを「アクシデント」にするか、「ハプニング」にするかを決める。つまり、余裕の有無が大きなポイントとなる。アクシデントは「事故」で、これは良くない思い出に変わり、ハプニングは「出来事」で、これが素敵な思い出として記憶に残る。これら二つの違いを生むのは余裕である。 私は現在、旅館業に携わっている。旅行業からインターネットによる予約機能会社、そして旅館等を経験する中で、今本当に感じるところ、それは三つの「間」だ。
・一つ目は 空「間」
・二つ目は 人「間」
・三つ目は 時「間」
これら三つの間の充実こそ、旅行業や旅館業に従事してきた私が今追求しているものである。効率化だけを求めやすくなっている世の中で、これら三つの間の充実が、今後のインバウンド需要に限らず、日本人にとっても国内旅行の充実、そして旅館が本来人々に与えるべき目的に関わり、「心の余裕」の達成へつながると信じている。 また、昨今問題になっているコロナ対策においても 「空間」「時間」「人間」の充実が鍵になると思っている。
私は、もう一度デジタルの有効力、潜在的な力と、アナログが人に与えるさまざまな影響との相違点を追求していくべきだと思っている。手段として効率的かつ利便性の高いデジタルと、四つの目的に対してアナログを介して三つの間が生まれる旅、そしてそこに生まれる「本当の余裕の意味」との違いを、今後もより追求していくことが私の使命であり、次世代につなげていくことが一番大事な使命だと感じている。
向井氏