「サスティナブル」に注力
ロワジールホテル那覇やオキナワマリオットリゾート&スパの総支配人を歴任しながら、沖縄観光の移り変わりを見てきた。
沖縄県は「観光立県」の自負の元、2019年には入域観光者数がインバウンドも含め1千万人を超え、世界的なリゾート地であるハワイにも匹敵する国内屈指のディスティネーションとして実績を上げてきた。われわれ観光業は県のリーディング産業として位置づけられ県経済を力強く牽引(けんいん)してきたが、20年3月以降、コロナ禍の脅威により大きく揺らいでしまった。
この危機的状況は全世界に共通ではあるが、観光に主軸を置いてきた沖縄経済へのマイナスインパクトは特に大きく、過去に9・11同時多発テロやリーマンショックなどの外的要因によるさまざまな危機を乗り越えてきた経験をもってしても、はるかに想像を超える非常に厳しい事態となっている。
コロナ禍でのホテルの運営状況は全く改善が見られぬまま1年半を超え、企業としての体力も限界に達しようとしている。現在はワクチン接種が進み、政府は経済復興に向けての動きを検討しているものの、次々に現れる変異型ウイルスの脅威の中で「人流」に対し疑心暗鬼になっている消費者の旅行マインドをどう取り戻すか、コロナ禍で生まれたニューノーマルにどう対応していくかが目前の大きな課題となっている。
営業面の損失は言うまでもないが、今後さらに大きな機会損失となり得るのが人財確保に関してである。コロナ禍でオペレーションを縮小せざるを得ないこともあり、観光業界への安定雇用に対する不信感が高まっていることは事実である。今いる従業員のモチベーションを高く維持しながら、観光業界を目指す新たな人財をどう確保していくかが、今後われわれにとって長期的かつ大きな問題となってくると思われる。
沖縄県の観光需要の回復はこの先、間違いのないことであると思われるが、その前に今できることを確実に実施していく努力、それは前述の人財の確保に加え、業界全体に課せられている自然環境への配慮を含むサステイナブルな取り組みが必要不可欠になると思われる。例えば、昨今よく取り上げられるプラスチックごみの削減、観光スポットにおけるオーバーツーリズムを見越したオペレーションの構築などは、今から確実に準備し実現していくべきことと心から強く思っている。
ウィズコロナにおいても、改めて旅行の基本である安全・安心の確保をベースに、旅先での体験を心ゆくまで楽しんでいただけるよう、チーム一丸となりこれからも日々の業務にまい進していければと思う毎日である。
坂本氏