マスではない、特定マーケット向け&サステイナブルな「看板商品」づくりを
日頃よりお世話になっている本紙ご担当より寄稿依頼をいただいた。締め切りは4月18日とのこと、いま何件か抱えている「観光庁看板商品創出事業」の提案締切日とほぼ同じ(汗)。
できれば次の機会に…という気持ちを抑え、他ならぬN氏からの依頼ゆえ引き受けることにした。ということでお題は「看板商品」にしようと思う。この事業、予算額から考えると1千件前後の採択枠があり、こぞって多くの地域がエントリーするものと考える。この記事が出る頃は審査真っただ中と思われるので(審査に)影響のない書きぶりにしておこう。
地域にとっての看板商品とはなんだろう。訪れる観光客が求める看板商品とはなんだろう。僕の前職時代であれば「たくさん売れる商品」が看板商品の定義だったように思う。たくさん売るにはオールターゲットに訴求できて、オールシーズン設定できて、多くの地域に横展開できる商品、つまり5W1Hをあまり特定しないものが看板商品に近しかった。
消費者が求める旅と商品が変化しつつあることは本紙購読者なら誰でも感じているところであろう。看板商品=量販ではなくなってきている。でも稼げないと地域には定着しない。ということは、同じ「500」という数字であっても「100名×5」ではなく「10名×50」「5名×100」をどう創り出していけるかということ。そもそもメジャー観光地以外は「嵐のように来てアッという間に去っていく」送客と誘客は求めていなかった。メジャー観光地でも後者のコンテンツ開発に力点を置くところが多い。今回の看板商品創出事業には「販路開拓をせよ」とある。10名×50のために必要な販路とは、「来てくれたユーザー」こそが販路という考え方もあると思う。100名×5のためには旅行会社や地域側関係者が主観でアピールする誘客手法が重要だったが、10名×50、5名×100のためには共感を呼ぶことが何よりも大事で、満足度はもとより再来訪意向(リピート志向)や紹介意向(シェア志向)の高い看板商品づくりが求められるというのが現時点での結論となる。そして伝え方の法則は「1からの脱却」、つまり「一過性」「一方通行」「一人称目線」ではなく、ユーザーリアクションや共感が次の消費者を呼び込むわけで、「最初の5名」を作る新たな販路を開拓したい。
誰が見ても「量販ありき」ではなく、そんな可能性ある地域にエールを送る採択=地域のチャンスが数多く生まれることを願う。
橋屋 哲氏