高付加価値化を高報酬化
「高付加価値化」という言葉を観光業界でも耳にするようになりました。他にも、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった言葉もよく見ます。まだFAX等をこれまたよく見る旅行業界では伸び代の大きいチャレンジだと感じています。
売り上げを伸ばし、経費を効率化する取り組みは大事です。同時に、観光業界全体で向き合うべき課題は、どう働き手の待遇を改善していくか、ということにあると感じています。全産業的に人材不足になる中で、観光業界としても競争優位性がないと良い人材を獲得できなくなってきています。観光産業の未来のためには、そこで生まれた利益を働き手に還元し、より魅力的な人材が集まり、さらに発展していく場を創っていく必要があります。
僕たちノットワールドでは、ガイド業界でこの課題と向き合っています。これまでガイドは、それだけでは食べていくことができないために、副業での担い手やリタイア層が中心でした。しかし、今後より良いサービスを提供していくためには、職業として担ってくれる真の「プロ」ガイドが求められます。
昔の通訳ガイドは語学と道案内ができれば、価値を提供できたかもしれません。でも、今の価格水準では、支払える報酬にも限度があります。どうすればゲストに高い価値を提供し、それに見合った代金を負担してもらえるのか。どうすれば経費を押さえて、ガイドに還元していけるのか。どうすれば、ガイドで1千万プレイヤーを輩出し、ロールモデルを次世代に見せることができるのか。
僕たちも昔は自分たちのツアーを担当するガイド育成だけを行っていましたが、それでは業界が衰退すると思い、2020年にガイドコミュニティ「Japan Wonder Guide」を立ち上げ、日本にガイド文化を創るんだ、という思いで取り組んでいます。(1)良いサービスを作ること(2)価値を見える化し価格に載せること(3)ITも活用し経費を合理化すること―これを個人・企業問わず観光業界全体で取り組んでいく必要があります。1社では実現できないことですが、みんなで手を取り合えば実現できると信じ、現在2500名のガイドと、19団体の賛助会員で高付加価値化・高報酬化に取り組んでいます。共感いただける方はぜひ輪に加わっていただけるとうれしいです。
優秀なガイドは、ガイドだけでなく、観光業界のどこでも活躍できる人材です。しっかりともうかる環境を創り、人から観光を盛り上げていきたいと考えています。