地域や時代に合った振興策を実行
「士農工商、犬猫、添乗員」という言葉をご存じでしょうか? 私が旅行会社に勤務していたころ、常に思っていた言葉です。意味するところは、「士農工商」は江戸時代の身分制度、「添乗員」は観光業に携わる方々の総称で、「犬猫」より「添乗員・観光業」の方が下、つまり観光業の扱いの低さを冗談を込めて表現したものです。
その背景には、観光業は平和産業であり、平和でないと成り立たない、逆にいえば戦時や災害など非常時には成り立たない。つまりどうしても必要な産業ではない、と思われていたことです。今では、観光は国も認める重要な産業と言われていますが、現実はいまだその域に達してはいないと感じています。
今のコロナ禍は、いわば戦時です。早く平常時に戻ってもらうことと、観光産業が真に必要な産業と認められることを望むばかりです。
そのような思いの中、現在は千葉県観光物産協会に勤務しておりますが、協会の前に千葉県庁で7年、その前には旅行会社に数十年勤務しておりました。
官民という言葉がありますが、「官」の県庁、「民」の旅行業、そしてその中間の「協会」と三つの異なる立場で観光業の仕事に携わってまいりました。
協会に勤務して4年、協会の目的や必要性を再認識し、本当に求められる協会を目指すためには何が必要かを今考えています。
多くの協会は、県や市町村の観光案内や誘客活動、産品の普及、宣伝を目的として設立されていますが、その体制もさまざまです。紙媒体からネット活用へ、また、不特定多数の人に向けたイベント中心の販促から旅行会社やメディアとの商談会など実を取る販促へと、その手法もここ数年で大きく変化してきました。併せて地域によってはDMOの設立や、その事務局を兼ねるなど、それぞれが進化をしている途中です。だからこそ今一度、協会に求められているものが何かの再検討が必要と考えます。
組織や体制の変更が多くみられますが、組織を作ることが先になり、実行する力が伴っていないことが多いように思っています。協会に求められるのは地域や時代に合った観光(物産)振興策を実行できることです。そのためには組織も大切ですが人がより重要です。自分で考える力を持ち、普段からの人間関係の構築で会員や地域の意見を的確に聞ける力を持った人が協会には必要なのです。
当協会も一人一人がその力を持ち、これからの観光業に求められるニーズをしっかり把握し、「官」には信頼を、「民」には頼られる「協会」になることを目指していきます。
椎名専務理事