【VOICE】訪日インバウンドにおける富裕層 帝京大学経済学部観光経営学科 教授 吉村久夫氏


吉村氏

お客様の厳しい要求に応える覚悟が必要

 6月10日から訪日外客の観光目的での入国が一部再開された。これから訪日インバウンドを再び成長軌道に乗せるために、さまざまな取り組みがなされていくことと思う。その中で今後さらに期待される富裕層ビジネスに関し、その特性と取り組みに関してお話ししたい。

 富裕層というと多くの人が「お金を持っている人」という認識を持っていると思う。その認識はある意味間違っていない。しかし同時に認識しておく必要のあることは、「お金を持っている人=お金を使う人」では必ずしもないということである。もちろん富裕層はお金を使うときは使う。しかしその使途は彼らにとって本当に使う価値のあるものが対象となる。

 まず富裕層は「特別感」を重視する。つまり「自分だけ」のものや体験を求めている。誰もが得られる情報や商品には価値を感じない代わりに、信頼できるソースからの口コミなどで得た情報は重視する。金融会社のクレディスイスによると、全世界で純資産1億ドルの超富裕層が6万8千人、純資産100万ドルの富裕層が5600万人いるが、このミリオネアの40%をアメリカ人が占めている(中国の約4倍)。そのためアメリカにはVIRTUOSOという高級旅行専門旅行社のネットワークがあり、世界で1800以上の選ばれたホテルやツアーオペレーターなどと契約をしている。

 また富裕層の人たちはいままでなんでも自分の思うようにできてきた分、どこに行ってもそれを求める。 例えばある富裕層のお客さまから自分たちは日本食が大好きなので、日本旅行中の食事は全て本場の日本食を食べたいと依頼があり、そのように手配したところ、2日目に飽きて、その後の日本食の手配は全てキャンセルし、取消料だけで数十万円かかったことがある。またある時は家族旅行で来日される富裕層が利用する車種に富裕層に人気のトヨタアルファードを指定してきたが、旅行先の東北には白いアルファードが多く、黒は手配が難しかった。しかし黒でないと高級感を感じないので、黒以外はダメということで、東京から黒いアルファードを東北まで持っていったこともある。

 このように富裕層のお客さまを受け入れるには、彼らのある種のわがままに根気強く対応する「忍耐強さ」と「覚悟」が必要となり、彼らの価値観にしっかり応えていくためには、単に高級なサービスやコンテンツを用意するだけでは不十分であることを肝に銘じておかなければならない。

 

 
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