「越境EC」はコロナ禍、コロナ後のインバウンド需要回復の切り札となるか
現場の生声を伺って政策を考えるため、国内外問わず出張の機会は多く、その際の密かな楽しみとして、当地のB級グルメを用務の合間に食したり土産にしていたのだが、コロナ禍でその機会もほぼなくなり、微力ながらインバウンド需要への貢献も困難となっている。
同様にさまざまな魅力的な産品がコロナ禍で行き場を失い、その活路として、海外への販路開拓を急きょ検討している地域も多いと聞くが、海外市場に食い込み、いかに自社製品と現地需要をマッチさせるか、現地に行けない中ではなおさらハードルは高い。
こうした中、起死回生の一手として注目を浴びているのが「越境EC」。要はオンライン商談会や通販である。JETRO(日本貿易振興機構)の支援事業も好調で積極的に勧めているが、「言われるがまま出展してみたが閑古鳥だった」という不満の声も耳にする。
このギャップの原因を突き詰めると、オンライン向け販売能力の有無にあることが分かった。要すれば、無名の地方の中小企業がサイトに出ただけでは見てもらえる訳がないのである。リアルならば現物を見ればその良さが伝わるかもしれないが、オンラインではその機会もない。
具体的には二つ。
(1)現物がなくても産品の良さをウェブで伝えられる手段。最近の流行は「動画」。10数秒で効果的にPRするセンスが必要となる。
(2)興味を示しそうな層に、いつどこに出展するのか効果的に伝える手段。インフルエンサーの助けが必要となる。
この能力を効果的に得られるよう、中小企業庁では、令和3年補正予算で、「デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業費補助金」を用意した。越境ECに適したブランディング・プロモーション能力を専門家のアドバイスを受けつつ獲得するための費用を支援する。
これは観光業界の皆さま方にもぜひご活用いただきたい。ウィズコロナ下の喫緊の需要開拓はもとより、アフターコロナでインバウンド需要が戻ってきたとき、来て、楽しんで帰った後もオンラインで産品を手に入れてもらえるようなビジネスモデルがまさに構築されようとしており、これに乗り遅れる理由はまったくない。
本記事掲載の頃には、ちょうど公募が開始される予定であり、次のホームページをぜひチェックしてみていただきたい。URLは、 https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/chiiki/digital-tool/r3_digital-tool.html 。
松本課長