中小河川・運河生かした水路観光を官民連携で実現
江東区は、隅田川と荒川に挟まれた23区東部に位置しています。江戸時代に水運用として掘削された小名木川、大横川、横十間川など多くの中小河川や運河が縦横に流れており、区内の橋梁の数は、何と130橋を超えるほどです。
これらの河川や運河は、昭和中期ごろまでは、材木のまち「木場」を拠点とした貯木場として利用された一方、水質の悪化による悪臭や水害発生場所だったことから、多くの区民から河川は危険で汚い場所として認識されていました。
この状況も、水質の改善、東京都の「江東内部河川整備計画」による区東側河川の水位低下と西側河川の耐震化、貯木場の新木場移転などで、今では安全で快適な河川へと変わりました。
地元住民には、このような河川、運河は見慣れた日常の風景ですが、外から訪れる多くの観光客にとって、舟運で巡るこれらの河川・運河の景色は非日常な光景として映るはずです。小名木川には、東西の河川通行を可能にするパナマ運河のような水位調整を行う閘門(こうもん)や旧中川には区が整備した「川の駅」といった施設なども点在しています。
また、南部の臨海部エリアには、東京2020オリンピック・パラリンピック大会で使用された競技場も数多く存しています。
10月中旬から11月にかけて、屋形船東京都協同組合が実施主体で、江東区、江東区観光協会、名鉄観光サービス、観光経済新聞社など、行政と複数の旅行関係事業者が連携した国の補助事業「江東水運観光MaaS」販売推進事業が行われます。この事業は、碁盤の目状に区内を走る水路を活用し、屋形船、観光船と要所にある駅などを区内広域型の水路観光MaaSとして結び、都内初となる「水運観光MaaS」を商品化しようとする事業です。
商品化と持続的な事業運営のため、旅行者を引きつける魅力の提供や事業採算性など、課題はありますが、河川、運河を活用する事業は、区内の貴重な観光資源である舟運を具現化するものです。私としても大きな期待を持って事業の進捗(しんちょく)状況を注視しています。
江東区内の観光スポットである渋沢栄一や松尾芭蕉ゆかりの地も、少なからずこの河川沿いに点在しており、湾岸エリアに存する東京2020大会のレガシー施設も幾つかは運河沿いに点在しております。
内部河川や運河を船で巡る非日常性と区内に点在する観光スポットを結び付ける舟運事業は、「水彩都市」江東の特性を存分に生かした魅力的な観光商品に育つ可能性を秘めています。
「江東水運観光MaaS」販売推進事業をきっかけに、今後江東区の舟運活用がより活発になることを期待せずにはいられません。
長島氏