エミレーツグループは13日、2021-2022通期業績を発表した。
グループ:新型コロナウイルス感染症の影響の長期化により、38億ディルハム(10億米ドル)の損失を計上したものの、dnataは黒字化を達成し、昨年度に比べグループ全体で業績が大幅に改善。
- 世界的な渡航規制緩和に伴う旅客需要増により、売上高は前年度比86%増の662億ディルハム(181億米ドル)を計上。
- 現金残高は258億ディルハム(70億米ドル)に好転。
エミレーツ航空:前年度203億ディルハム(55億米ドル)の損失に対し、本年度の損失は39億ディルハム(11億米ドル)に大幅縮小。
- 売上高は前年度比91%増の592億ディルハム(161億米ドル):世界的な運航拡大および旅客便の再開が影響。
- 供給容量は前年度比47%増の364億有効輸送トンキロ(ATKM)。本年度中、最後のA380型機を5機受領。
dnata: 前年度18億ディルハム (4億9,600万米ドル)の損失に対し、本年度は1億1,000万ディルハム (3,000万米ドル)の利益へ好転。
- 売上高は前年度比54%増の86億ディルハム(23億米ドル):UAEおよび世界の全事業部門がコロナ禍から回復に向かう。
- イージージェットのグローバル機内販売サービスを買収したほか、貨物施設、空港ホスピタリティ施設と小売施設を新設し、グローバルに展開。
2022年5月13日(ドバイ現地時間)、エミレーツ・グループ(本社:アラブ首長国連邦・ドバイ、会長:シェイク・アハメッド・ビン・サイード・アル マクトゥーム殿下)は2021-2022の通期業績を発表しました。エミレーツ航空およびdnataは、コロナ禍の影響を受けた航空輸送および旅行関連事業の回復に尽力しました。dnataは黒字化し、グループ全体で力強い回復を示しました。
エミレーツ・グループの2021年度(2021年4月1日~2022年3月31日)通期業績によると、前年度221億ディルハム(60億米ドル)の損失に対し、本年度は38億ディルハム(10億米ドル)の損失を計上しました。グループ売上高は、前年度比86%増の662億ディルハム(181億米ドル)となりました。世界的な渡航規制の緩和をはじめ、グループの主要事業部門および市場における力強い需要回復により、キャッシュバランスは前年度比30%増の258億ディルハム(70億米ドル)となりました。
エミレーツ・グループ会長兼最高責任者であるシェイク・アハメッド・ビン・サイード・アル・マクトゥームは次のように述べています。「この一年間、我々は渡航規制が緩和された市場において、迅速かつ安全に運航を再開させることに注力しました。特に下半期中は、事業が急速に回復しました。本年度は旺盛な顧客需要に支えられ、昨年度の未曾有の損失から業績が大幅に改善し、強固なキャッシュバランスを確保することができました。
世界的なパンデミックから2年が経過しましたが、我々は常に顧客および従業員の健康と安全を重視してきました。エミレーツ航空とdnataの両社は、目まぐるしく変化する市場に速やかに対応し、顧客のニーズを満たし、最高の体験を提供するために革新的な商品とサービスを導入してきました。
さらに本年度、アラブ首長国連邦(以下、UAE)は建国50周年を迎えたほか、ドバイ国際博覧会(Expo 2020 Dubai)の開催地として世界中の人々を迎え入れました。エミレーツ・グループは、ドバイ万博の成功をはじめ、UAE 50周年記念に関わるイベントに貢献できたことを誇りに思います。」
本年度、エミレーツ航空は主要株主であるドバイ政府から35億ディルハム(9億5,400万米ドル)の追加出資を受けました。また、様々な業界支援プログラムを利用し、約 8億ディルハム の救済資金を受け取りました。
エミレーツ航空とdnataの運航拡大に伴い、パンデミック中に一時解雇や待機となっていた従業員は呼び戻され、再雇用されました。また、グループ全体の人材を補充し、将来に向けて育成すべく、本年度中に採用活動も実施しました。その結果、グループ全体の従業員数は13%増の85,219人となり、160以上の国籍の従業員が在籍しています。
本年度、エミレーツ・グループは79億ディルハム(22億米ドル)におよぶ新型航空機、設備や最新技術に投資し、事業回復と将来の成長に向けて体制を整えてきました。CO2排出量削減、責任ある消費、野生動物と生息地保護等といった環境への取り組みも継続的に推進しました。また、様々な市場におけるコミュニティ支援、人道支援、慈善活動を支援し、将来的に業界の成長を促す人材やイノベーションを育むインキュベータープログラムに対する投資も続けてきました。
シェイク・アハメッドは、次のように述べています。「エミレーツ・グループは、史上最も過酷だった昨年度を経て、2021-22年は回復に向けて尽力しました。単にキャパシティを増やすのではなく、再建しながら将来を見据えた能力を強化することに努めました。我々の目標は、より良く、より強く再建することで、さらなる顧客体験を提供し、より多くの地域社会を支援することです。
2022-23年は、グループ全体で黒字化を見込んでいます。燃料価格の高騰、インフレ、新型コロナウイルスの新変異株、政治・経済の不確実性などの影響に注視しながら、目標達成に向けて邁進します。
インフラ、テクノロジー、人材、パートナーシップへの着実な投資を通じて、我々は業界をリードする商品や価値を顧客に届けるための能力と優位性を維持しています。ドバイとUAEがこの先50年、そしてさらに先の戦略を進める中、エミレーツ・グループは経済成長、グローバルな取り組みの促進、人々とコミュニティへのポジティブな影響等の役割を果たし、貢献してまいります。」
エミレーツの業績
コロナ禍による渡航規制の緩和に伴い、エミレーツ航空は旅客ネットワークの再開を続けてきました。その結果、本年度の総旅客および貨物輸送能力は前年度比47%増加し、364億有効輸送トンキロ (ATKM)となりました。
エミレーツ航空は、本年度始めには約120都市に就航していましたが、2022年3月31日には140都市までネットワークを再開させました。人材とビジネスモデルの融通性により、エミレーツ航空は可能な限り顧客需要に柔軟に対応することができ、運航再開と輸送能力の拡大を実現することができました。また2021年7月にマイアミ線を新規就航したことにより、アメリカへの就航都市が合計12都市となりました。
旅行需要の回復に対応するため、エミレーツ航空はフラッグシップ機のエアバスA380型機をさらに多くの都市に就航しました。2022年3月31日時点で、エミレーツA380ネットワークは29都市に就航しています。
旅行者がより多くの都市にアクセスできるよう、エミレーツ航空はアエロマール航空、エア・バルティック、エアリンク、アズールブラジル航空、セムエア、ガルーダ・インドネシア航空、ガルフ・エア、南アフリカ航空、TAPポルトガル航空と新しいインターライン契約およびコードシェア契約を結び、カンタス航空およびフライドバイと既存の戦略的パートナーシップを強化しました。また、さまざまな観光局と共に旅行を支援する契約を締結し、取り組みを開始しました。
本年度は、プレミアム・エコノミーを含む最新機内プロダクトを備えたエアバスA380型機を新たに5機受領しました。また、ボーイング777-300ER型機 を1機、貨物専用機を1機、計2機退役させたため、2022年3月末時点の保有機数は262機となりました。エミレーツ航空の平均機齢は8.2年と若く保たれています。
現時点では、エミレーツ航空の197機の受注予定に変更はありません。環境に優しく、燃費も良く、お客さまに心地よい空の旅を提供できる近代的で新しい機種を運航する戦略を堅持しており、ブランドのスローガンでもある「Fly Better」に強く基づいています。
輸送力が多くの市場で大幅に拡大したことにより、本年度の総収益は前年度比91%増の592億ディルハム(161億米ドル)でした。本年度の為替変動は、航空会社の収益性に3億4,800万ディルハム(9,500万米ドル)のマイナスの影響を及ぼしました。
前年度に比べ、総運営費は30%増加しました。本年度の運営費は、所有コスト(減価償却費)と燃料費の2つが最も大きく、次いで人件費が大きな割合を占めました。燃料費が占める割合は、昨年度の14%に対し、本年度は運営費の23%を占めました。燃料価格が平均75%高騰する中で輸送量が66%増加したことにより、燃料費は前年度比2倍以上の139億ディルハム(38億米ドル)となりました。
世界的なパンデミックによる渡航制限が多くの国で緩和されたことにより、本年度の損失は39億ディルハム(11億米ドル)となりました。前年度の203億ディルハム(55億米ドル)の損失に対し、本年度は業績が大幅に改善しました。損失率は、前年度の65.6%に対し、本年度は6.6%にまで回復しました。
エミレーツ航空の乗客数は1,960万人(前年度比199%増)、提供座席数は前年度比150%増でした。また、昨年度の座席利用率44.3%に対し、本年度は58.6%の座席利用率を報告しました。路線構成、運賃、通貨の影響により、旅客イールドは前年度比10%下がり、有償旅客キロ数(RPKM)は35.1フィルス(9.6米セント)に減少しました。パンデミックという異常事態のため、座席利用率と旅客イールドの結果を前年度と比較することはできません。
エミレーツ航空は、これまで以上に優れた顧客体験を提供するために、商品とサービスへの投資を続けました。本年度は、プレミアム・エコノミーの座席と最新機内設備を約120機の777型機とA380型機に装備する大規模な改修計画を発表しました。
また、よりスムーズかつ安全な旅行を提供するためにデジタル技術も強化しました。迅速かつ安全な新型コロナウイルス関連の渡航情報のデジタル認証を提供したほか、ドバイ国際空港では生体認証と非接触技術をあらゆる段階に導入しました。
世界的な渡航制限緩和に伴い、エミレーツ航空はより多くの顧客が安心して旅行を計画できるよう、さまざまな取り組みを導入し業界をリードし続けました。柔軟な予約条件とオプションをはじめ、無料新型コロナウイルス感染症補償をすべての顧客に提供しました。また、エミレーツ・スカイワーズ会員のマイルおよびティア・ステータスの有効期限の延長を行いました。
パンデミック2年目である本年度も、エミレーツスカイカーゴは変動性の高い世界市場の中で変わりゆく需要に迅速に対応することにより、総売上高の40%に貢献し、顕著な業績を収めました。
エミレーツスカイカーゴは顧客を中心とし、市場へ革新的ソリューションの提供や、保有機材および貨物ネットワークの活用により、世界の航空貨物業界における優位性を保ちました。
さらにネットワークとキャパシティの再構築や、貨物機とベリースペースの供給容量をスマートに配置し、顧客のニーズに応えました。2021年6月30日時点、コロナ前のネットワークの90%以上までサービスを回復させました。
この1年、エミレーツスカイカーゴは新型コロナワクチンやその他医療品を世界各地のコミュニティに届け、食料品やeコマース、その他必需品の輸送網を提供する重要な役割を果たしました。2021年6月にドバイの医薬品専用の低温流通設備の拡張に伴い投資を行い、2022年3月には10億回分以上の新型コロナワクチン輸送を達成しました。
ドバイ・エアショー2021では、新造ボーイング777型貨物機2機の発注とボーイング777-300ER型旅客機4機を貨物機に改修するために10億米ドルを投じることを発表しました。
年度を通して航空貨物需要は非常に高く、エミレーツ航空の貨物部門の売上高は前年度比 27 %増の 217億ディルハム(59億米ドル)となり、過去最高売上高を記録しました。
世界市場における貨物容量の回復に伴い、貨物輸送トンキロ(FTKM)当たりのイールドは前年度比 3%の減少となりましたが、コロナ禍の堅調な需要を背景に概ね高水準を維持しました。
貨物輸送量は、旅客サービス再開によりベリースペースの搭載容量が年間を通じて増加したため、前年度から14%増の210万トンとなりました。年度末時点でエミレーツススカイカーゴが保有する総貨物機数は、ボーイング 777F型機10機となっています。
エミレーツのホテル事業は観光客の増加や会議産業の緩やかな回復に対応するため、複数施設の営業を再開し、売上高は前年度比2倍の6億200万ディルハム(1億6,400万米ドル)となりました。
この1年間、エミレーツ航空は様々な航空機のリースの再編や延長に成功しました。このような困難な時期に、航空会社の貸手や融資パートナーが支援してくれたことは、エミレーツ航空のビジネスモデルおよび中長期的な見通しに対する金融界からの信頼の高さを反映しています。
エミレーツ航空は、2021年度中に航空機および一般事業目的で調達した97億ディルハム(26億米ドル)の資金に加えて、2022-23年に納入予定の航空機2機に対して、すでに融資の確約を得ています。
エミレーツ航空の2022年3月期の現金資産は前年同期比38%増の209億ディルハム (57億米ドル)となりました。
dnata業績
パンデミックからの回復はdnataの全事業に及び、2021-22年は1億1,000万ディルハム(3,000万米ドル)の利益を計上し、黒字に転換しました。
世界中でフライトや旅行が増加する中、dnataの総売上高は54%増の86億ディルハム(23億米ドル)に達しました。国際事業の売上高は全体の62%を占めています。
dnataはさらなる成長に向けて基盤を築くべく、2021年度中に3億7,000万ディルハム(1億100万米ドル)の投資を行いました。
dnataの2021年度の運営費は、世界各地の空港オペレーション事業、機内ケータリング事業および旅行サービス部門の業務拡大に伴い、前年度比 14%増の84億ディルハム(23億米ドル) となりました。
dnataのキャッシュバランス(現金残高)は、前年度から2億800万ディルハム改善し、49億ディルハム (13億米ドル)となりました。 財務活動に使用された純現金は、主に借入とリースの実施で7億4,500万ディルハム (2億300万米ドル)に達した一方で、重要な投資活動に2億4,600万ディルハム(6,700万米ドル)の純現金の支出がありました。2021年度の営業活動におけるキャッシュフローは売上高の大幅な改善が反映され、12億ディルハム(3億3,200万米ドル)の黒字となりました。
グランドハンドリング(航空機地上支援業務)と貨物ハンドリングを含むdnataの空港オペレーション事業の売上高は増加し、57億ディルハム (16億米ドル)となりました。
dnataが全世界で取扱った航空機発着回数は前年度比82%増の527,501回、貨物取扱量は10%増の300万トンとなりました。この数字は、世界各地でのフライト・旅行に関わる市場規制緩和に伴い、dnataの顧客が営業再開し、フライト数も増加したことが影響しています。
dnataの総売上高のうち、dnataの機内ケータリング事業の売上高は17億ディルハム(4億5,500万米ドル)を占め、前年度比60%増加しました。機内ケータリング事業は、顧客である航空会社の運航状況回復に伴い、前年度比2倍以上の3,990万食を提供しました。
dnataの旅行サービス部門の売上高は大幅に増加し、前年度比434%増の6億9,400万ディルハム(1億8,900万米ドル)となりました。旅行サービス部門は前年から一転し、総取引額は912%増の23億ディルハム(6億3,200万米ドル)を計上しました。前年度の新型コロナウイルスの影響により予約取消が多発した異常事態を受け、本年度は大幅な増加となりました。
エミレーツ航空、dnata並びにその他子会社を含むエミレーツ・グループの2021-2022通期業績事業報告書(全文)はこちらよりご参照ください:https://www.theemiratesgroup.com/annualreport