経済活動などで排出した二酸化炭素(CO2)を植林や森林保護、自然エネルギーの購入などで埋め合わせる(オフセット)仕組み、いわゆるカーボンオフセットに取り組む企業や自治体が増えているが、交通エコロジー・モビリティ財団が構築した「交通・観光カーボンオフセット支援システム」を利用した、初めてのオフセット2件がこのほど、実施された。同財団は「これが先行事例となり、オフセットに取り組む観光関係業者が増えてくれれば」と話している。
実施したのは、山梨日日新聞社やYBS山梨放送などから成る山日YBSグループの旅行会社、YBS T&Lと、長野県飯田市でタクシーや介護サービス事業などを手がけるおさひめコーポレーション。
YBS T&Lは東海大甲府高校(甲府市)の沖縄への修学旅行で実施した。2年生268人が3泊4日の日程(3月5〜8日)で沖縄を訪れたが、飛行機とバスの移動で排出されたCO2の10%(約9.6トン)をオフセットした。
「埋め合わせには、インドの小規模水力発電プロジェクトから生じた国連認証の排出権を使用。オフセット料金約4万8千円は生徒が負担、1人当たり約180円となった」(同財団)。甲府高は環境教育の教材として活用しているという。
おさひめコーポレーションは、環境問題に取り組んでいる団体や企業などがオフセットを希望する場合、同社のチケットでタクシーを利用した際の排出CO2を同社負担でオフセットする。月ごとの利用料金を請求する際、同社がオフセットを実施した証明書を発行する。
同財団は交通・観光事業者によるカーボンオフセットを支援するシステムを初めて構築(国土交通省推奨)、09年末から稼働、利用申請の受け付けを始めた。対象業種は旅行やタクシーのほか、ホテル、鉄道、航空、バスなど。
申請、登録されれば、同財団が事業者に代わって一括でプロバイダーと契約し、クレジットの調達や償却を実施する。また「登録事業者はウェブを通じて排出量の算定、クレジットの購入、オフセット実施が可能」としている。
カーボンオフセットに取り組む観光関係事業者も出てきているが、「コスト高となり、プロバイダーとの契約やシステム整備にも時間がかかる」と同財団。支援システムの年間利用料1万円という低コストなどを挙げ、利用を呼びかけている。
ただ、現状はシステムの知名度の低さもあってか、問い合わせはそう多くない。このため、今年度は各地で説明会を開きPRに努めるとともに、「事例集を作り、具体性をアピールしたい」と意気込む。