キャンピングカー、旅館の駐車場で受け入れ


渡部氏

渡部氏

 キャンピングカーのビルダー(メーカー)、ディーラーで組織する日本RV協会は、全国の旅館・ホテルに向けて、自館の駐車場にキャンピングカーを受け入れ、車の中で寝泊まりしてもらう「湯YOUパーク」制度への参画を呼びかけている。現在参画している旅館・ホテルは約100軒。駐車場のほか、館内の温泉施設やレストランを有料で利用してもらうもので、旅館・ホテルの新たな収入源としても機能している。キャンピングカー評論家の渡部竜生氏に、同制度の概要や、日本におけるキャンピングカー旅行普及の可能性を聞いた。

──国内のキャンピングカー保有台数は。
「日本では5万台程度が保有台数といわれている。アメリカは800万から900万台。東欧を除くヨーロッパは、ドイツやフランスが中心になるが、500万から600万台といわれている。ヨーロッパあたりは1930年代からキャンピングカーが普及しているが、それに比べると日本はまだまだ歴史が浅いから、当然台数も少ないことになる」

「ただ、伸びは大きい。04年から05年まで、出荷ベースで15%ぐらいの伸びを示している。その後も恐らく似たような伸びを示しており、自動車メーカーが、不況で車が売れないと苦労している中で、順調に伸びているのではないかと思う」

──RV協会が「湯YOUパーク」制度を作った背景は。
「今までキャンピングカーのユーザーは、キャンプ場でキャンプをする人が多かった。ところが、年配の人が退職金でキャンピングカーを購入するなど、ユーザー層が広がってきた。ユーザーが増えるにつれ、キャンピングカーで観光に行きたい、という人も増えてきた。ただ、キャンプ場は観光地の近くにあるとは限らないし、新たに整備するのも大変なことだ。そこでRV協会が音頭を取り、この制度を作ったわけだ」

「キャンピングカーの台数が増えるにつれ、問題になるのが泊まる場所。欧米などは歴史が古いから、ちょっとした観光地や高速道路のサービスエリアに、キャンピングカーを安価で泊められる専用の施設がある。しかし日本にはない。これでは行く場所が限られてしまい、車も売れなくなる、ということで、旅館・ホテルに着目するようになった」

──制度はどんなものか。
「『旅館・ホテルの客室は使いませんが、駐車場に泊めさせてください。それからお風呂を使わせてください。それからできればご飯も食べさせてください』というものだ。比較的大きな旅館を中心に、北海道から九州まで、約100軒の旅館・ホテルがパートナーとして名を連ねている」

──旅館・ホテルがかかる手間とコストはどうか。
「旅館・ホテルは空いている駐車場のスペースを提供すればいいだけ。特別なサービスは必要ない。RV協会に登録する際の登録料や、ユーザーが施設を利用した際の手数料などは一切かからない。RV協会では無料で、協会のホームページで制度に参画している宿を紹介している」

──キャンピングカーで泊まる際の標準的な施設利用代金は。
「利用代金はRV協会が『いくらにしてください』といっているわけではなく、旅館・ホテルが自由に設定している。相場としては幅が広いが、例えばキャンプ場は1泊1台3千円ぐらいだから、そのぐらいにしないとユーザーとしては使いづらいところはあるかもしれない」

──制度に参画する旅館・ホテルの声は。
「わざわざ駐車場まで行ってサービスする必要がないため、手間がかからなくていい、という声がある」

「制度がスタートした当時、『キャンピングカーをお宅の駐車場に泊めさせてほしい』という話をしたら、『うちの駐車場でテントを張られたり、たき火をされたりしたらかなわない』という声があった。このような誤解をとくのが、協会としては大変だったようだ」

──日本では欧米並みにキャンピングカーが普及するだろうか。
「アメリカは2億人の人口で800万から900万の台数がある。日本では400万台ぐらいの潜在需要があることになるが、国土の広さも違うし、そこまではいかないと思う。ただ、50万台ぐらいはいくのではないか」

──旅館・ホテルの経営者に一言。
「キャンピングカーの一ユーザーとして、旅館・ホテルの方々にはぜひこの制度に注目していただきたい。キャンピングカーはまだマイナーな存在だが、それだけに愛好家同士の集まりが結構ある。私の知っている一番大きい集まりは、200台から300台が一挙に集まるもの。ホテルの駐車場を借りるのだが、ホテル側には相当の収入になっているはずだ。そこまでいかなくても、20台や30台の集まりは結構ある。空きスペースがある旅館・ホテルさんは新たな収入源として、キャンピングカーの受け入れも検討されてはいかがだろうか」

渡部氏
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