ジェイグラブ 代表取締役社長 山田彰彦氏に聞く


山田氏

越境ECの可能性

補助金が活用できる今が好機 旅アトをフォローするツール

 ――越境ECとは何か。

 「日本から海外にインターネットを使い、商品を販売すること。在庫が日本にあることが前提である。BtoCの取引では、ライセンスも必要ない。5年前から浸透し始めている」

 ――ジェイグラブが行う”越境ECの販売代行サービス”とは。

 「海外のECサイトやECモールに出店することが越境ECのスタートとなる。われわれは、海外にインターネットを使い、販路を開拓したい人に向けて、伴走サポート・コンサルティングをしている。よく、EC業界は良くも悪くも作って終わりが9割9分だといわれている。どれだけ良いショップを構築しても、継続しなければうまくいかない。国内での販売は国や中小機構などから支援があるも、海外へのBtoCとなると支援が少なく、失敗例も多く見受けられ、販売代行後のサポートは必要だと感じている」

 ――海外のECモールはどのようなものがあるか。

 「一番知られているのは、世界最大の総合オンラインストア『アマゾン』。このほか、アクティブユーザー数1億8300万人以上の『イーベイ』、東南アジアにユーザーが多く、手数料がリーズナブルな『ショッピー』、中国市場では『ティーモールグローバル』などがある」

 ――ECサイトは。

 「170万社以上が利用する『ショッピファイ』、数千の拡張機能がある『マジェント』、ワードプレスで構築できる『ウーコマース』などがある。どこにも特徴があり、ターゲット、商品により最適なECモール、ECサイトは異なる。分からない場合は、ぜひ相談してほしい」

 ――海外への出店となると多額の費用がかかりそうだが。

 「越境ECサイトを構築する場合、ある大手に見積もるとシンプルな構成でも数百万円、複雑な仕様で3千万円と言われる場合がある。例えば、事業者数人で商品数が少ない状態で運営する場合、1千万円のECサイトはオーバースペックに感じる。この場合には海外ECモールに出店することで固定費や初期費用がゼロ、売れたら15%など、成果報酬型にして低コストで収める選択肢もある。ホームページも英語で分かるものがあれば良い。22年度には、中小企業庁が越境ECでの販路拡大を支援する『デジタルツール等を活用した海外需要拡大事業費補助金』の公募を用意している。補助額が上限500万円、補助率が補助対象経費の3分の2というものだ。初年度はコストがかかることが多く、このような制度は活用してほしい」

 ――補助金を活用するのであれば、どこに投資すれば良いのか。

 「基本的には、立ち上げでのショップ構築費用、年間での伴走サポート・コンサルティング費用、そして集客費用。補助金によっては集客費用にも使える。ショップ構築費用は、ECモールが30~50万円程度、ECサイトであれば少なくとも50~100万円かかる。カスタマイズをすると200万円程度になる。伴走サポート・コンサルティング費用は、低い場合で月に3~5万円程度かかる」

 ――越境ECを始める際の心構えは。

 「長期戦で構えること。よくお願いされるのが、サポート開始してから半年程度で大きな売り上げを求める場合が多いが、海外でのブランド力がない中では厳しい。最低で3年、できれば5年でプランを作る必要がある。失敗例の9割は、長期戦に持ち込めないことが理由だ」

 ――始めるに当たっての注意点は。

 「動機が『新規事業』の場合が多いが、身の丈に合った規模感で始めることだ。初期でつまずく7、8割は、適切なプラットフォーム選択をせず、費用を最初にかけすぎたことが原因となっている」

 ――ジェイグラブと関わる事業者数は。

 「個別相談やECサイト、ECモールの構築、コンサルティングを合わせると2900社を超える」

 ――観光業界の人たちに越境ECの可能性を。

 「旅マエ、旅ナカは充実するが、旅アトがないと感じている。アンケートでは、母国へ帰国後に商品を購入したいという人が7割と多い。今の海外の人たちは現地で買って持ち帰ることは少なく、母国で調べて買えないことを知ることが失望につながっている。旅アトをフォローし、リピーター化するツールとして、越境ECを使ってほしい」

 ――越境ECで売れているものとは。

 「アパレル、雑貨を含め、かわいいデザインのものは売れやすい。革にこだわりを持つが、海外で同じデザインで安価なもの、ブランド力が高いものがある場合は売れない。また、日本の地方でしか買えないものも需要が高い。東京で国内外の多くのものがそろうように、世界でも日本の有名なものは、大方販売されている」

 ――売れる価格帯は。

 「若い人は予算が少なく2~5千円程度。欧米で年収が高い人は、金額は関係ない」

  ――越境ECは怖くないということか。

 「そうだ。逆に妄想して怖がっている人が多い。ECが拡大している今こそ、チャレンジする好機だ」

 

やまだ・あきひこ=越境ECコンサルタント。eBay JAPAN創業メンバー、ヤフーコマース事業などを経て、2010年に同社を創業。ジェトロ新輸出大国コンソーシアムEC専門家、中小企業庁「新しい担い手」越境EC委員なども務める。

【聞き手・長木利通】

 
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