今月からプレミアムフライデー
プレミアムフライデーは、買物や家族との外食、観光など個人が幸せや楽しさを感じられる体験や、そのための時間の創出を促す取り組み。3月以降の月末金曜日も継続して実施される。
博報堂行動デザイン研究所が12月に発表した調査結果では、プレミアムフライデーの過ごし方は「旅行」が31・5%とトップだ。一方で、外出をせずに「自宅でのんびり過ごす」が30・3%で二番目に多く、旅行とほぼ並んでいる。
旅行と答えた人にどういった旅行をしたいか聞くと、1位は「一泊1・5日の国内旅行」(27・8%)だった。2位が「二泊2・5日の海外弾丸旅行」(21・4%)、3位が「一泊1日グルメディナーツアー」(11・1%)。国内旅行で二泊しようという考えの人は少ないようだ。
ビジネスチャンス逃すな
旅行各社はプレミアムフライデーを好機と捉えている。阪急交通社は「旅行とプレミアムフライデーは親和性があり、消費行動を起こさせるきっかけと成り得る」と期待する。JTBも「財布のひもが固い中で、旅行に行きやすくなり、ビジネスチャンスだ」と話す。
旅行の日数、泊数が増えるだけでなく、旅行先や旅行者層など旅行形態の幅も広がると見る。「今までも週末の夜発のプランがあり、若い女性をメインに安定的に売り上げていた。今後はファミリー層による参加も期待している」とKNT―CTホールディングス(HD)。JTBは「従来の週末は近場の温泉旅行だったが、沖縄などのリゾート旅行の需要もあると期待している」という。
「旅に出よう」とPR
JTBは、プレミアムフライデー向けツアーのタブロイド版を作成。国内ツアーでは「金曜日に出発すると、土日の旅も『2・5日旅』に! 少し早めに仕事を終えて旅に出よう」とアピールする。東日本出発ではユニバーサルスタジオ・ジャパンや新潟・群馬・信州・東北のスキー&スノーボード、金沢などのプランを提案。各プランをホームページでも紹介する。
近畿日本ツーリストは、ウェブ特集ページでプレミアムフライデー専用ツアーを発表。既存の商品をベースにして特典を付けている。
1月中旬から専用ホームページを開設し、金曜午後から出発できる商品を取りそろえたのは日本旅行。2月24日と3月31日出発の商品に使えるクーポンを配布し、ネットで申し込みを促進した。「割引額は制度開始への期待を込めて1万円とした」と同社。
阪急交通社では、国内旅行、海外旅行ともに金曜日の夕方の航空機を利用したフリープランを中心に販売中だ。
日本旅行業協会(JATA)によると、プレミアムフライデーについては「20社以上が取り組み中」だ。事業方針に取り上げ、各社に働きかけた成果も出たという。観光庁の田村明比古長官は15日の専門紙向け定例会見で、「旅行需要で言えば、近距離の海外、国内旅行に一定のプラスになる。それに対応して旅行業界などが取り組むのは結構なことだ」と旅行各社の活発な動きを歓迎する。
実施企業は少数
旅行促進効果に期待のかかるプレミアムフライデーだが、各種調査によるとプレミアムフライデーを実施する企業・団体はまだ少数。このため各社とも関連商品の販売に手応えを感じるまでに至っていない。
日本旅行は「現状では大きな拡大にはつながっていない」と話す。KNT―CTHDは「反響はまだなく、他社を含めて世間の様子を見ている」、阪急交通社も「販売を開始して間もないこともあり、まだそれほどの需要喚起とまではいっていない」と口をそろえる。
企業・団体の約8割が前向きに検討しているというプレミアムフライデー。旅行各社は「この制度が社会全般に根付き、多くの人があいた時間を旅行に費やす方向になっていけば」(日本旅行)と期待を寄せる。3月は多くの企業にとって年度末業務で忙しい31日に当たるため、実施する企業・団体が4月以降に増えるかがカギとなりそうだ。
【プレミアムフライデー旅行取材班】