日本政策金融公庫はこのほど、ホテル・旅館、飲食など生活衛生関係営業の景気動向等調査の7~9月期分を公表した。同期のホテル・旅館の業況判断DIは前期(4~6月期)比6.9ポイント減のマイナス10.7だった。生活衛生関係営業全体は同7.7ポイント減のマイナス21.9。同公庫は生活衛生営業の景況について「持ち直しの動きに足踏みが見られる」と、前回調査の判断を据え置いた。
DIは前期対比で業況が好転とする企業割合から悪化とする企業割合を引いた値。
前年同期(昨年7~9月期)との比較では、ホテル・旅館が3.3ポイント減。生活衛生関係営業全体は2.0ポイント増と、2期ぶりに上昇した。
来期(10~12月期)の見通しDIは、ホテル・旅館が今期比10.2ポイント減のマイナス20.9。生活衛生関係営業全体は1.5ポイント減のマイナス23.4。
調査は9月上旬、生活衛生関係営業3290企業に実施。このうち3151企業から有効回答を得た。ホテル・旅館は177企業が回答した。
各地の特徴的な動きで、ホテル・旅館の主な回答は次の通り。
「日韓関係の悪化による観光客の減少がかなり響いてくる。景気の後退も懸念され好材料がない」(来期・悪化、北海道)。
「昨年から飯坂温泉全体で温泉むすめキャンペーンを実施しており、そのアニメキャラクターである飯坂真尋を求めて訪れる宿泊客が増加した」(今期・好転、福島県)。
「日韓関係の悪化で韓国人のインバウンド宿泊客の予約が激減している。具体的な対応策を見いだせない状況で、今のところ明るい材料は少ない」(来期・悪化、東京都)。
「経費削減のため、ワンルームマンションを借り上げる会社が増えているようで、売り上げが大幅に減少している」(今期・悪化、富山県)。
「宿泊客の増加はあるが、競合する大手チェーンとの宿泊料金の価格競争が激化しており、宿泊部門は苦戦している。一方、飲食部門は競合の撤退があり、全体で現状維持している」(今期・不変、静岡県)。
「お盆休みが長かったため、家族連れのお客さまが多くなった。また、今夏にスポーツ施設『サオリーナ』がオープンしたことで、スポーツ大会の選手、観客等の宿泊客増に結びついた」(今期・好転、三重県)。
「インバウンド需要等の取り込みで、相変わらずホテル等の新設が続いており、宿泊客の減少と客単価の下落が続くと考えられる」(来期・悪化、京都府)。
「個人旅行客は減少傾向だが、スポーツ団体や学生団体の宿泊は安定している。一方、9月はラグビーワールドカップが開催されるものの、宿泊予約は少ない状況」(今期・不変、兵庫県)。
「昨年は台風等で予約キャンセルが増え、宿泊客は落ち込んだが、本年は地元開催のイベントが多く開催されたことから、宿泊客増加に結びついた」(今期・好転、和歌山県)。
「今年はお盆期間が長く、団体客だけでなく県内周辺からのファミリー層の宿泊が増えており、満室でにぎわう日が続いた」(今期・好転、山口県)。
「年間で一番人出がある阿波踊りで、4日間のうち2日が台風で中止となったため、宿泊キャンセルがあり業況は悪化した」(今期・悪化、徳島県)。
「昨年は西日本豪雨等の影響で予約のキャンセルが相次いだが、今年はお盆時期の台風接近によるキャンセルも軽微で済んだことから、悪化することはなかった」(今期・不変、高知県)。
「インバウンド客やイベント客を見込んで、新規ホテルが相次いで開業するなど競争が激化している。併せて、日韓関係の悪化で韓国人の宿泊が激減しており、業況は悪化している」(今期・悪化、福岡県)。
「日韓関係の悪化が長引いており、韓国人旅行客からの予約が激減している。また、来期は秋の観光シーズンであるが、今年は消費増税を控え予約は低調で、悪化が続く見込みである」(来期・悪化、大分県)。
「熊本デスティネーションキャンペーンを利用したツアー客や、南部九州高校総体の選手、応援等の連泊宿泊の需要で稼働率が安定して高く、好調に推移している」(今期・好転、熊本県)。