マイルで拓く次世代の旅 ANA X 代表取締役社長 神田真也氏に聞く


ANA X 代表取締役社長 神田真也氏

「マイルで生活」目指して TaaSで個人手配強化

 今年4月、全日本空輸(ANA)のプラットフォーム事業を手掛けるANA Xの新社長に神田真也氏が就任した。グループ会社としてのANA Xの役割や、力を入れる取り組みなどについて聞いた。

 ――社長就任から約半年がたった。就任当初と現在の心境は。

 「ANAに入社後、約30年前にカードやマイレージを扱う宣伝販促部という部署にいた。その世界で再び挑戦することができて率直にうれしい半面、旅行事業については航空運賃制度の変化やOTAの台頭など、大きく変わっていて驚いた」

 「当社は旅行と同時にマイレージを扱う非常にユニークな会社。旅行会社でありながらANAのマイレージ戦略を裁量を持って運営できる立場にあり、さらなる事業の発展に向けて気持ちを新たにしている」

 ――2021年4月にANAセールスの旅行事業を承継し、新生ANA Xとなった。再編に至った背景やANA Xの役割は。

 「当時の旅行事業はパッケージツアーを中心に取り扱っていて、パンフレットによる店頭販売で売り上げが成り立っていたが、時代の移り変わりとともに収益性が厳しくなり、プラットフォーム事業会社へと再編した。パッケージツアーは22年度に店頭販売を廃止。現在はダイナミックパッケージと個人旅行を主力ビジネスとしており、デジタルを通じてお客さまに分かりやすく訴求し、購入につなげられるかが当社の役割だ。この事業変革の中でコロナ禍が加わり、宿泊施設への送客が減ってしまったが、新たな旅行販売の仕組み等を検討しており、今後の送客に期待してほしい」

 ――「マイルで生活できる世界」をコンセプトに掲げている。

 「1マイルから使えるANA Payや、ANA Mallも開始しており、『マイルで生活できる世界』は確実に広がっている。しかし何といっても当社のマイレージサービスの魅力は”お客さまの次の旅”につながること。マイルを通じてお客さまの『旅』と『日常』をつなぐ世界観を提供しているのが強みだ。また、普段飛行機を利用しない人にも日常の移動でマイルがたまるアプリ『ANA Pocket』を展開している。そういう意味では、当社のANAのマイレージサービスは幅広い人に門が開いていると言えるだろう」

 ――今年3月に本格開始した「TaaSプラットフォーム構想」について。

 「TaaSは、旅の素材の検索・予約・管理がスマートフォンで完結できる旅のサービス。航空券を購入したお客さまにホテルやレンタカーなどの個人手配の予約を促すことで、クロスセルを強化する。開始した3月には国内宿泊予約サービスの拡充、7月には国内レンタカー予約サービスの提供を開始した。操作性や見やすさなどの課題を解消したところ、検索誘導率、コンバージョン率ともに上昇傾向にあり、半年間で非常に手ごたえを感じている。次のステップとして、今年度中にアクティビティ予約サービスを開始する予定だ」

 ――ANAの強みと課題をどう捉えているか。

 「ANAは圧倒的なオペレーションとサービス力でお客さまに安心感を与えられる航空会社。これまでのさまざまな取り組みが評価され、航空業界の格付けを行うSKYTRAX社の調査では最高評価の連続5スターを11年連続獲得している。最近は、シンガポールの英字新聞『ストレイツ・タイムズ』らが実施した顧客満足度調査で、シンガポール市場において1位に選ばれ、ANAグループの一員として大変誇りに思う」

 「課題は個人的な意見だが、日本国内の国際線の就航地点が少ないこと。訪日需要も含めて利用機会が増えることを期待したい」

 ――今後の展望は。

 「30年前もマイレージに携わっていたと申し上げたが、30年たった今でもマイレージサービスは色あせることなく盛り上がりを見せている。今後も旅行×マイル×デジタルという当社の強みを生かして、マイルをためる体験、旅の体験などをいかにお客さまに訴求できるかを追求し続けていきたい。直近では、ANAの国際線特典航空券を通常より半額のマイル数で購入できるキャンペーンを投じた。さまざまな楽しみを具体的に伝えることで、お客さまに旅行の楽しさ『ワクワク』を知ってもらい、次の旅に行きたくなる―。こういった喜びの循環を作っていく」

【聞き手・溝部あゆ美】

 かんだ・しんや 1990年4月ANA入社。2015年4月ANAホールディングス(HD)秘書部副部長、20年4月ANAアジア・オセアニア室室長兼シンガポール支店支店長などを歴任。24年4月ANAHD上席執行役員・ANA X代表取締役社長。

 
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