ヤマップ、絶滅危惧「ライチョウ」の生息域調査 写真投稿で容易に


 登山地図GPSアプリ「YAMAP」を運営するヤマップ(福岡県福岡市、春山慶彦CEO)は2023年6月5日、同社が環境省と2022年6月5日より実施している、登山者が投稿する写真のビッグデータを山岳生態系調査に活用する「みんなで守る山岳生態系プロジェクト」について、取り組みの経過を発表した。中央アルプスを中心にライチョウの生息域を可視化する「ライチョウモニター」を推進し、従来比7.7倍の個体特定につながるなど、市民参加型生物調査の一手法として新たな可能性を見い出せる結果となりました。

個体が特定できた件数 = 従来比「7.7倍」に

従来の手段(情報収集カード)とライチョウモニターを同期間(ともに2022年4月1日〜10月31日)で比較した表。従来の手段(情報収集カード)とライチョウモニターを同期間(ともに2022年4月1日〜10月31日)で比較した表。

 中央アルプス各所に設置された「情報収集カード」の回収枚数172件に対して、「ライチョウモニター」では530件と、従来比3.1倍の投稿がありました。同じく写真提供件数47件が436件と従来比9.3倍、また、生息域把握の重要指標となる個体が特定できた件数は18件が139件となり、従来比7.7倍という結果となりました。

記録があった場所 左:情報収集カード 右:ライチョウモニター記録があった場所 左:情報収集カード 右:ライチョウモニター

 記録された情報・データ(上図)を収集・分析した上で、フィールド調査を実施したところ、一昨年(2021年)よりもライチョウの「なわばり」の範囲が拡大しており「南駒ヶ岳」や「三ノ沢岳」方面にもライチョウが生息していることがわかりました。(下図)

なわばり(赤丸箇所)が8箇所から17箇所に増え、生息域の拡大を確認なわばり(赤丸箇所)が8箇所から17箇所に増え、生息域の拡大を確認

 SNS・ビッグデータの応用に留まらず、市民参加型生物調査の一手法としても新たな可能性を見い出せていることから、本年も「みんなで守る山岳生態系プロジェクト」では「ライチョウモニター」の推進を図ってまいります。

ライチョウモニターについて

「ライチョウモニター」の画面。同エリアで目撃されたライチョウの写真を画像識別。撮影場所とともに一覧表示する。「ライチョウモニター」の画面。同エリアで目撃されたライチョウの写真を画像識別。撮影場所とともに一覧表示する。

 登山地図GPSアプリ「YAMAP(ヤマップ)」の“登山者が投稿した写真の撮影位置を特定し、日本地図上に表示する機能”と”AIを活用した画像識別機能”を掛け合わせることで、ライチョウの目撃情報を日本地図上に見える化。中央アルプスを訪れる登山者に広く協力を呼びかけることで、従来の自治体による専任チームの人力だけでは限界があった高山帯での調査・保全活動の課題にビッグデータで応えるアプローチとして期待を集めてきました。

投稿された情報をもとに、調査員が現場に赴き、ライチョウの状況確認・保護活動を実施。ストックされたデータは、季節別の目撃例分布状況の把握や生息域の経年変化を導き出す資料としても活用する。投稿された情報をもとに、調査員が現場に赴き、ライチョウの状況確認・保護活動を実施。ストックされたデータは、季節別の目撃例分布状況の把握や生息域の経年変化を導き出す資料としても活用する。

 ライチョウは2012年に、環境省のレッドリストで絶滅の危険が増えている「絶滅危惧Ⅱ類」から、絶滅の恐れの高い「絶滅危惧IB類」に格上げされ、現在も、生存が危ぶまれている高山帯特有の生物種です。

中央アルプスでは、個体群が絶滅したと考えられていましたが、2018年にメス個体1羽が確認され、以来さまざまな保護活動が展開されています。これまでライチョウが確認されていなかった地域での目撃情報は、個体数の増加に伴う分布の拡大が予想されており、非常に貴重で有益なデータとなっています。

参考記事
◯ 環境省×YAMAP『ライチョウモニター』|あなたの投稿が絶滅の危機を救う
URL:​https://yamap.com/magazine/35109
◯ 登山者の「スマホ投稿」で「ライチョウ」絶滅回避へ(2022年6月2日 発表)
URL:https://corporate.yamap.co.jp/news/2022-06-02
◯ 株式会社ヤマップと環境省との協定の締結及び取組開始について(環境省、2022年5月24日発表)
URL:​https://www.env.go.jp/press/111103.html
◯ レッドリストのカテゴリー(ランク)
URL:https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/rank.html

YAMAPについて
電波が届かない山の中でも、スマートフォンのGPSで現在地と登山ルートがわかる、登山を楽しく安全にするアプリ。山行の軌跡や写真を活動記録として残したり、山の情報収集に活用したり、全国の登山好きと交流したりすることもできる、日本最大級の登山・アウトドアプラットフォームです。(2021年8月 登山アプリ 利用者数調査 [App Ape 調べ] )
2023年5月に累計370万ダウンロードを突破。
URL:​https://yamap.com/

株式会社ヤマップ 会社概要
会社名 株式会社ヤマップ
本社所在地 福岡市博多区博多駅前3-23-20 博多AGビル6F
資本金(資本準備金含む) 1億円
事業概要
1. 登山・アウトドア向け WEB サービス・スマートフォンアプリ「YAMAP」の運営
2. 登山・アウトドア用品のセレクトオンラインストア「YAMAP STORE」の運営
3. これからの登山文化をつくるメディア「YAMAP MAGAZINE」の運営
4. ガイドと登山者をつなぐ山旅のプラットフォーム「YAMAP TRAVEL」の運営
5. 自然特化型クラウンドファンディング「YAMAP FUNDING」の運営
6. 山・自然を活用したコンテンツ開発・コンサルティング・プロモーション 等
URL:https://corporate.yamap.co.jp/

 
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