事業者の取り組みを全力で支援 まずは能登半島地震からの復興
自民党観光産業振興議員連盟(観議連)の会長に岩屋毅衆院議員(大分3区選出)が就任した。岩屋新会長に就任に当たっての抱負、コロナ禍と能登半島地震で打撃を受けた宿泊など観光業界の復興に向けた取り組み、観光立国推進への思いを聞いた。
――観議連の会長に今年1月就任。現在の心境、抱負を。
まず、これまで力強いリーダーシップを発揮していただいた、今は亡き細田博之前会長のご功績に心から敬意を表し、感謝を申し上げたい。
その細田前会長の後を受けて、甚だ非力だが、今般、議連の皆さまのご推挙をいただいて、会長に就任することとなった。お引き受けした以上は、全力を尽くして日本の観光の再生、発展に向けて、議連のメンバーの皆さんとともに、その責任をしっかりと果たしていきたい。
私は別府という観光地が地元。このコロナ禍の3年間、観光業界が甚大な被害を被ったことを間近で見てきた。3年間の観光業界のロスは、日本全国で恐らく40兆円ぐらいの規模に上っている。
それがようやく峠を越えて、さあ今から反転攻勢という時、この元日に能登半島地震が発生して、石川県をはじめ北陸地方の観光が、また甚大な被害を受けている。
まずは議連として、北陸観光の復興に全力を尽くす。その上で観光立国の実現に向けて、しっかりと歩を進めたい。
インバウンドはコロナ前の8割ぐらい回復しており、さらに消費額はコロナ前を上回っている。政府の2030年までのインバウンド6千万人、消費額15兆円という目標は変わっていない。この目標が確実に達成されるように、議連としても観光施策の一層の充実に力を尽くしたい。
旅館・ホテルをしっかりと支えることが議連の主たる役割だ。これはこれからも変わらないが、観光は関連する業界が非常に多い。旅行業の皆さん、交通事業者の皆さん、その他、多くの関連事業者の皆さんともしっかりとコンタクトを取っていきたい。
――日本における観光の重要性についてどのように認識されているか。
日本は経済の停滞が続き、「失われた30年」ともいわれてきた。人口減少も加速している状況で、年間80万人ぐらいが減っている。GDPは昨年、ドイツに総額で抜かれてしまった。
そのような中にあっても、もう一度、この日本の経済を持続可能な成長軌道に乗せていかねばならない。
その柱となるのが、私は観光だと思っている。インバウンド消費は国の会計では輸出勘定になる。政府目標である15兆円を達成できれば、観光が自動車を抜いて日本最大の輸出産業になる。ぜひ、実現したい。
地域においては人口減少がどんどん進んでいる。人口を急に増やすことは難しいので、交流人口をいかに増やすかが重要となる。そのツールとなるのが観光だ。
国の経済の再生のためにも、地域の活性化のためにも、観光をこれからの日本の大きな柱の一つにしていかねばならない。
先進国において、GDPに占める観光の割合はおよそ10%。今まで日本は5%ぐらいで推移している。ということは、観光は少なくともあと5%の伸びしろがあるということだ。金額でいうと25兆円から30兆円。あるいはそれ以上だ。この伸びしろを埋める成長をぜひとも達成しなければならない。
――コロナ禍が収束するも、過剰債務、人手不足、能登半島地震からの復興と、観光業界は課題が山積している。
まずは最初に申し上げた北陸観光の再生が重要だ。「北陸応援割」が実施されているが、状況を見た上で、必要とあれば延長することも考えていかねばならない。
すぐにお客さんを受け入れられないほど大きなダメージを受けた地域については一日も早く再建ができるようにしっかりと支援をしていく。議連としても現地に足を運び、皆さまの声を直接聞かせていただき、施策に反映させたい。
コロナ禍の3年間で事業者の皆さんは過剰な債務を抱え、今から返済をしていかねばならない。これについてはできる限り、事情の許す範囲で返済の猶予や繰り延べのような措置を取れるように働き掛けていきたい。
今、どこに行っても人手不足で、皆さん本当に困っておられる。簡単に解決できることではないが、一つは外国人材の活用も必要だ。技能実習制度、特定技能制度が見直され、より安心して働いてもらえるようになる。
パートで従事していただいている方もいるが、「年収の壁」で働き止めという現象も起きている。今、臨時の措置で乗り越えようとしているが、早晩、本格的に、この年収の壁を取り払い、潜在的な労働力を活用できるようにしなければならない。
事業者の皆さまには、効率化という努力もやっていただく必要がある。そのための設備投資に対する税制や補助金を通じた支援を充実させたい。今、活用いただいている高付加価値化事業の補助金を、少し形を変えてでも延長、継続できるよう働き掛けたい。国際観光旅客税の収入も使えるようにすべきだと思う。議連で議論したい。
――そのほか日本が観光立国を目指す上で国や事業者が推進すべきことは。
日本に来るインバウンドの方は今まで近隣諸国が中心だったが、どんどん広がっている。その意味から言うと、多様性への対応がこれからの日本観光の一つの課題だと思う。例えば多言語対応や食の多様性への対応。これらのニーズに応えられるようにしていかなければならない。SDGsへの配慮が行き届いた観光サービスも大切だ。
今までの「見る観光」から体験型観光にニーズがシフトしている。地域のDMOや観光協会が機能を充実させて、さまざまな体験メニューを用意してほしい。
コロナ禍の3年間を経て、オンラインで仕事をすることが当たり前のようになった。デジタルノマドという人たちが世界中にいる。インバウンドの新たな形態と捉えて、受け皿を作ることも必要だ。
――本紙読者の旅館・ホテル経営者に激励のメッセージを。
観光は国の成長戦略の大きな柱であるだけでなく、地方創生、地方活性化の大きな柱であり、その担い手は旅館・ホテルの皆さんだ。その意味で、地域にとっても、国にとっても極めて重要な業態であると思う。
しかし、だからこそ進化、改革も必要だ。そのための皆さんの取り組みを観議連は全力で支援をする。共に力を合わせて、世界に冠たる観光立国日本をつくり上げてまいりましょう。
岩屋毅衆院議員
【聞き手・森田淳】