世界ジオパーク認定の隠岐諸島、島根県がPR強化


250メートルの断崖「赤壁」

250メートルの断崖「赤壁」

 島根県は10月2〜4日、首都圏のメディア関係者を対象にした隠岐諸島を巡るプレスツアーを開催した。県が隠岐に焦点を当てたプレスツアーを行うのは初めて。9月に世界ジオパークに認定された隠岐の大自然を中心に、伝統的な「古典相撲」や隠岐に配流された後鳥羽上皇の足跡を紹介しながら、島の景観や文化、歴史をアピールした。

 隠岐諸島は、「島前」と呼ばれる西ノ島町、海士町、知夫村の三つの島と、「島後」と呼ばれる隠岐の島町がある島、計四つの有人島と180の無人島で構成される。

 島根の境港から隠岐の島町の西郷港までは高速船で1時間30分、飛行機では出雲縁結び空港から隠岐空港まで30分、伊丹空港からは1時間で着く。

 隠岐観光協会によると、昨年の隠岐4島の観光客数は20万人。主にシニア層が中心で、7割が個人旅行だった。全体の6割が中国地方からの観光客で、近畿からは2割程度。関東からの観光客は1割弱しかいない。飛行機だと羽田から約2時間の距離だが、知名度の低さが悩みの種だ。

 世界ジオパークの認定をきっかけに、今後は特に関東を中心とした若い世代の誘客を促進したいところ。隠岐の観光業界に携わる20〜30代の有志が、同世代の誘客を図ろうと、地元旅行会社と共同で女子旅に焦点を当てた商品を開発するなど、注目していきたい動きもある。

断崖絶壁を遊覧船で観賞
 島前と島後の4島は約600万年前の大規模な二つの火山活動によって形作られた。島前の三つの島は外輪山としてカルデラ地形を形成しており、内海は世界に二つしかないカルデラ湾になっている。

 島後の隠岐の島町北西の福浦岸壁から小さなローソク島遊覧船が出ている。船は沖合50メートルに佇む、高さ20メートルの奇岩、ローソク島に向かう。ローソク島は、夕日が岩の先端に重なるとまるで巨大なろうそくに火が点ったように見えることから名付けられた。近くで見ると熱さまで感じるという。

 プレスツアーを担当した隠岐観光協会の脇田円さんは「ローソク島を見るために隠岐に来る人がいるほど人気。夕日が点ると“パワー”がもらえる」と語る。

 同船は4〜10月に毎日運航している。

 島前の海士町の菱浦港からは国賀めぐり定期観光船が出航している。西ノ島中央の船引運河を通り外海へ。日本海の高波を進み、国賀めぐりのハイライト、摩天崖へ。

 目の前に現れた摩天崖の大絶壁は高さ257メートル。隆起と日本海の強い潮風により海食された岩肌に、溶岩流と火山灰などが交互に積み重なった地層を見ることができる。

 摩天崖の周りには、コバルトブルーの色をした洞窟「明暗の岩屋」など、神秘的な岩や洞窟が点在する。

 国賀めぐり定期観光船は4〜10月。

 島前で最も南に位置する知夫村には高さ250メートルの断崖、赤壁がそびえ立つ。まるで削り取られたような荒々しい岩肌を見せる断崖には、日本海の荒波が打ち寄せる。壁面の鮮やかな赤色は、鉄分が酸化したもの。透明度の高い青い海と赤い断崖のコントラストは圧巻の一言。夕日が赤壁を照らすとより美しい。赤壁を海から眺める赤壁遊覧(4〜10月運航)も人気だ。

 赤壁からほどなく歩くとカルデラ湾を望む赤ハゲ山にたどり着く。春には野だいこんの花畑になる牧草地には、420頭の黒毛和牛が放し飼いにされている。

必ず引き分ける人情相撲
 島後の隠岐の島町では昔から神事として奉納相撲が行われてきた。現在では「古典相撲」と言われ、神社の遷宮や病院、学校など公共事業が完成したときだけ開催される。地区別に、強さと人格が備わった人物を力士として選出し、一昼夜掛けて取り組みを行う。

 古典相撲は、1回の取り組みで2番行う。1番は真剣勝負。勝った者は2番でわざと負け、必ず1勝1敗で終わらせるのが決まり。狭い島内でしこりを残さないための先人の知恵で、「人情相撲」とも言われる由縁となっている。

 古典相撲をテーマに描いた映画「渾身」のロケ地にもなった水若酢神社には、実際に古典相撲が行われる土俵が鎮座する。

 次に古典相撲が開催されるのは、同神社の20年に1度の屋根の葺き替えが行われる8年後の予定。古典相撲を見てみたい人は、神社の境内に隣接する五箇創生館へ。古典相撲や牛の相撲「牛突き大会」の迫力ある映像を見ることができる。

 また、神社のそばにある、隠岐郷土資料館には、島の人が竹島で漁を行っていた当時の貴重な写真や資料が展示されている。

後鳥羽上皇遠流の島
 隠岐は古くから配流の島として知られ、承久の乱で破れた後鳥羽上皇は晩年の19年間を島前の海士町で過ごした。住まいにしたとされる源福寺は明治の廃仏毀釈で取り壊されたが、跡地には石碑と小さな池が残されている。

 跡地のそばには上皇の遺灰の一部が祀られている後鳥羽上皇御火葬塚、後鳥羽上皇を祭神として崩御700年に建てられた隠岐神社、海士町後鳥羽院資料館があり、歌を詠むことが好きで、隠岐で700首詠んだとされる上皇の歌に触れられる。

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