中国からの訪日客が急増する中、査証(ビザ)の要件緩和などに伴い経済力のある消費者の個人旅行(FIT)化が進んでいる。3千人規模の観光文化交流団の訪中に合わせ、中国の消費者に直接、訪日観光の魅力を訴えようと、「ビジットジャパンFITトラベルフェア」が23、24日、北京市内のホテルで開かれた。地方自治体や観光組織、観光事業者など45団体が出展。出展者からは、中国の個人旅行市場の拡大に寄せる期待が多く聞かれた。
FITトラベルフェアの主催は日本政府観光局(JNTO)。出展したのは、地方自治体・公的機関25団体、宿泊施設7社、旅行業5社、運輸業4社、小売業など4社。会場に詰めかけた来場者に観光パンフレットを配布したり、訪日旅行の相談に応じたりした。
日本旅館、温泉の魅力をアピールしたのは、鹿児島県指宿市の温泉旅館、指宿白水館。騠田吉範営業本部部長は「国・地域を選ばず全方位的にインバウンドに取り組む考えだが、何と言っても中国の伸びしろは大きい」と指摘。砂むし温泉などをPRする一方で、「やはり日本旅館を売りたい。文化を守りながらも、中国の個人旅行者に日本旅館をしっかりと売っていく」と話した。
ゴールデンルートにとどまらず、地方に外国人を呼び込むことは、訪日観光の大きな課題の一つ。広域連携で中国に観光エリア「昇龍道」を売り込む中部(東海・北陸・信州)広域観光推進協議会の中島信夫部長は「ゴールデンルートは需要の増加で宿泊などの手配が難しくなっていると聞く。昇龍道の中国での認知度はまだまだだが、注目度を高める好機だ」。
ゴールデンルートなどに続き、中国からの旅行者に人気が高い北海道は、季節の需要変動などを踏まえてPRを展開。北海道観光振興機構・事業企画推進部国際プロモーショングループの藤田栄一郎次長は「夏と春節をピークに多くの中国人旅行者が訪れているが、他の時期の誘客が課題だ。秋の紅葉、春スキーなどの魅力を紹介し、年間を通じて来てもらえるようにしたい」。
クルーズ市場の拡大に注目するのは九州。長崎県文化観光国際部観光振興課の井川博行企画監は「県内には長崎港に加え、新しい岸壁と国際ターミナルができたばかりの佐世保港もある。北京などの市場にクルーズを売り込んでいく。同時に、県内の関係者が連携して平戸や雲仙などの認知度を上げたい」。
このほか、東日本大震災からの需要の回復など、インバウンドの活性化が期待される東北地方からは、東北観光推進機構、福島県、宮城県が出展。同機構事業部の庄子芳和担当部長は「東北に関心を持ってもらえるような情報の発信に努めていく。東京あるいは北海道にプラスして東北を売り込むような施策も大切だ」と語った。
すでに多くの中国人観光客を集めている神奈川県箱根町も出展。火山活動により大涌谷の一部への立ち入りが規制されていることの観光への影響について、箱根町企画観光部観光課の松島基樹係長は「来場者から質問を受けるということはないようだ。6月に箱根観光を予定しているという方からは、おすすめの観光スポットなどを聞かれたほど。いずれにしても今後も正確な情報の発信に努め、受け入れに万全を期していく」と話した。
中国旅行業と商談会も開催
中国の消費者に訴えかけるFITトラベルフェアとともに、日本の観光関係者と中国の旅行会社との商談会も22日、北京市内のホテルで開かれた。
主催はJNTO。事前アポイント制のマッチング方式の商談会として実施された。日本側は地方自治体や旅行業、宿泊業、運輸業、小売業など67団体が参加。中国の旅行業39社の担当者と商談を繰り広げた。
北京市内のホテルで開かれたビジットジャパンFITトラベルフェア