京王電鉄バスとITベンチャー企業の空は12月17日、高速バス座席予約システム「SRS」でバス事業者向けにダイナミックプライシング(価格変動制)機能を提供するサービスを始めた。
SRSは京王電鉄バスが運営する高速バス座席予約システム。予約、発券に加え、精算、利用分析機能も持つ高速バス基幹システムで、利用客向けには「ハイウェイバスドットコム」のサイト名で、高速バスの予約、決済サービスを提供している。全国45社のバス事業者が同システムを導入しており、140を超える高速バス路線の座席販売を行っている。
空は、宿泊施設向けにダイナミックプライシングシステム「マジックプライス」を提供している企業で、ホテル業界向けに開発、運用してきた価格変動制機能のノウハウをSRSに提供する。
ダイナミックプライシングは、京王バス、アルピコ交通、長電バスが運行する「新宿・池袋―長野」路線と、京王バス、宮城交通が運行する「新宿―仙台」路線の2路線で開始。提携バス会社と導入路線は順次拡大する。
京王電鉄バスの福島八束取締役運輸営業部長、空の松村大貴CEO、高速バスマーケティング研究所の成定竜一代表取締役が12月10日にオンライン記者発表会を開催。福島氏は高速バスへのダイナミックプライシング導入の背景について、「一部の路線では、便ごとに運賃を変化させる運用を人力で行ってきたが、運賃設定担当者の負担増加や業務の属人性が課題となり、路線数増加の障壁となっていた。限られた便数の中で、利用客の満足度向上とバス事業者としての収益確保を両立するために、需要に応じて運賃を柔軟に変化させることで、繁忙期の『満席でのお断り』を減らし、閑散期の割安な利用を促進することが、結果的に多くの方に便利に高速バスを利用いただけることになると考えた」と語った。
成定氏は、高速バスの市場規模と現況について「コロナ禍前の数字になるが、高速バスの年間利用客は1億人強で、航空を上回り、鉄道に次ぐ第2の基幹輸送モードだ。ただ、慢性的な乗務員不足により、需要が集中する繁忙期・時間帯の続行便(2号車、3号車)が不足し、『満席お断り』が発生し、利用客の高速バス離れを招きかねない事態に直面していた」と説明。その上で「ダイナミックプライシングの導入により、需要の分散化や車両、乗務員といった限られたリソースの配置の最適化、適正収益の確保が実現できるはずだ」と指摘した。
記者発表会に出席した京王電鉄バスの福島氏(中央)、空の松村氏(右)、高速バスマーケティング研究所の成定氏