年間5千万人の観光客が訪れる京都市はこのほど、大規模災害時に自宅に戻ることができない「帰宅困難者」を安全に誘導する方針を定めた「観光地避難誘導取組指針」、市内各地区の具体的な避難誘導計画のひな型「観光地・地区避難誘導計画」を策定した。市防災危機管理室によると、特定の観光地で観光客を想定した帰宅困難者対策をとるのは全国で初めて。
市の試算では、大規模災害時に観光客13万人、全体で37万人の帰宅困難者が発生し、大きな混乱が生じる恐れがある。
指針によると、市は災害発生時「緊急速報メール」で一斉帰宅を抑制。地域で定めた一時滞留場所(オープンスペース)に、地域で定めた「運営担当者」が帰宅困難者を誘導する。その後、旅館やホテル、社寺が帰宅困難者に対し、備蓄物資、情報を提供。行政などは公共交通機関が運行を再開したことを確認した後、帰宅困難者の帰宅を支援する。
市では今年度、清水・祇園、嵯峨・嵐山の2地域で、自治連合会と自主防災会、社寺などの地域関係者による協議会を設置し、地域の事情に応じて具体的な避難場所や避難誘導方法などを示した誘導計画を策定する。
さらに、誘導看板の設置や日本語と英語、中国語、韓国語の4カ国語表記による避難誘導用チラシの作成、災害情報発信体制の整備にとりかかることにしている。
市は2年前から、観光客を含めた帰宅困難者対策の検討を始め、昨年12月に観光団体や社寺、鉄道会社、学識経験者らで構成する「帰宅困難者観光地対策協議会」を設置して具体的な検討を進めていた。