休暇分散化の説明会、疑問点続々


関東ブロックの説明会(今月2日、東京都内で)

関東ブロックの説明会(今月2日、東京都内で)

 観光庁による休暇取得分散化の地方説明会が終了した。4月27日の沖縄ブロックから、今月9日の北陸・信越ブロックまで全国10カ所で開催した。政府の観光立国推進本部が検討している春と秋の大型連休に関する具体案、分散化の意義などを説明。地域各界の関係者との意見交換では賛同の声もあったが、経済活動への影響、分散化の手法などに関する疑問点も多く挙げられた。

■分散化の影響
 説明会には観光業界はもとより、経済界、労働界、教育界などの関係者が出席。観光庁幹部からの説明に続き、出席者が意見を述べた。各運輸局のまとめによると、さまざまな声が出ている。

 導入に前向きな意見として「内需拡大につながる」「ライフスタイルの変化を促進できる」「まずは分散させる地域を3分割ぐらいでやってみては」などの声がある一方で、「祝日に基づく地域の伝統的な文化や行事、または恒例のイベントなどをどうするのか」「ものづくりの基盤や社会効率が悪化し、国力が低下するのでは」「本当に親子がいっしょに休めるのか」などの疑問が出た。

 有給休暇の取得促進を祝日法改正による分散化より先に、あるいは分散化と併せて進めるべきだとする意見も根強い。「フランスなどでは有休が完全取得できるのに、日本でできない理由は何か」などの問題提起も。

 観光産業からの意見にも期待と不安が入り混じる。「平日の低い稼働率を考えると、分散化の重要さがよく分かる」といった指摘がある半面で、「観光業界は圧倒的に賛成が多いと予想されがちだが、そうでもない。優勝劣敗への不安がある」として、ピークの平準化により事業者間や観光地間の格差が拡大するとの懸念も。「ハッピーマンデー程度の休みが多い方が国内旅行にはよい」などの意見もあった。

■手法に疑問も
 今月2日に開かれた関東ブロックの説明会には約450人が出席。意見交換では関東観光推進会議の有識者委員を務める2人が発言した。

 立教大学教授の清水愼一氏(JTB常務取締役)は、ピーク期の需要に合わせた収容能力を前提としている旅館・ホテルへの影響、秋の大型連休化に伴う海外旅行へのシフトなどを課題に挙げ、「宿泊施設や観光地の競争力向上とセットで考えないと、混乱も予想される」と指摘。「学校休業を多様化させ、親が有休を取得できるような意識醸成を図るのが最初の取り組みとしてはよいのでは」との意見も述べた。

 まちづくりなどを支援する「玄」代表取締役の政所利子氏は「旅を楽しむライフスタイルが一番大事なポイント。旅を促進する仕組みとして、今の分散化案には大きなハテナマークが付く。手順という面でもう少し研究が必要」と述べ、フランスの学校休業の分散化が休暇取得や地方分権などの法制度と連動している点などを指摘した。

■埋蔵需要を試算
 関東ブロックの説明会で観光庁の溝畑宏長官は「有給休暇の取得がいっこうに進まず、観光旅行の宿泊日数も下降が続く中、何らかの改革が必要。休暇分散化で需要が増えれば、観光産業はすそ野が広いことから、多くの業種にビジネスチャンスが生まれる。余暇や家族の時間づくりにもつながり、経済はもとより精神的にも豊かさをもたらす」と説明。手法についても「中小企業などの経営を支えながら有休取得を促進する国の制度ができていない以上、まずは祝日法改正による休暇分散化が必要ではないか」と理解を求めた。

 観光庁は、説明会で出た意見を政策立案に反映させるほか、ウェブサイトを通じた一般からの意見募集も行う。また、旅行需要の見通しなど分散化の効果に関する調査を実施しており、今月中にも結果を公表する予定。

 観光庁の調査は今年のゴールデンウイークを対象とし、期間中の旅行消費額を算出するほか、観光地の混雑や交通渋滞などを理由に旅行に出かけない「埋蔵需要」などを試算する内容。同時に経済産業省でも分散化の産業界への影響などを調査している。

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