国際観光旅館連盟の佐藤義正会長は6日、立教大学観光研究所のホスピタリティ・マネジメント講座の講師を務めた。社会人や大学生を前に、旅館経営をテーマに講義。倒産や民事再生に至る事例が相次ぐなど、旅館の景況が厳しい中で、「日本の伝統文化を継承し、地方の特色を色濃く反映した、品質的にも顧客満足度の高い旅館は絶対に残さなければならない」と強調、経営環境や客室流通の改善に向けた課題などを解説した。外国人観光客の誘致での旅館の重要性も指摘、「RYOKANを世界語にしたい」と夢を語った。
佐藤会長は、国内宿泊旅行需要の低迷、団体旅行から個人旅行へのニーズの変化、価格競争の激化などを要因に、多くの旅館で経営が悪化した経緯を説明。価格競争については、「安売りによる需要の掘り起こしはすでに限界に来ている。それは商品そのものが客に見放される限界であり、供給する側が利益を得られないために疲弊する限界でもある。もうその限界ぎりぎりまで来ている」と指摘した。
経営破たんした旅館を安く買い取った新規参入者が、短期間の利益を目的に価格競争を仕掛け、地域全体の衰退を招くといった事例も問題視。「残すべきところは残さねばならないが、破たん、再生を繰り返せば、いつまでも需要と供給のバランスはとれない。座して待てば、し烈な価格競争を助長し、旅館の文化や地方の特色が極めて希薄な宿泊施設ばかりになってしまう」と危ぐした。
客室流通の課題についても解説。団体旅行の全盛期に送客を旅行会社に依存しきった結果、「旅館は消費者に対するマーケティングを怠り、営業力を失った。流通におけるサプライヤーとしての発言力を弱めてしまった」と反省点を挙げた。
景況の悪化に伴い、旅行会社に支払う手数料の負担感が重くなり、旅行会社に提供した客室の販売が伸び悩む中で、流通の改善を重要課題として、「本来、旅館と旅行会社はイコールパートナー。発言力を高め、客室流通を改善しない限り、旅館業、国内旅行に元気を取り戻すことはできない」と訴えた。打開策の1つとして、複数の旅館が共同で客室を管理し、消費者や旅行会社に販売する新たなシステムの必要性などを挙げた。
また、訪日外国人観光客の受け皿として、伝統文化とおもてなしの心を提供する日本旅館の重要性を強調した。「RYOKANを『寿司』や『交番』、『改善』のように世界語にしたい」と語り、海外富裕層市場の開拓などにも意欲を示した。
ホスピタリティ・マネジメント講座は毎年度、約3カ月間で計34回の講義を行う。今年度の受講生は72人、うち社会人が半数以上を占める。大学教授のほか、観光業界の経営者などが講師を務める。佐藤会長が講師を務めたのは、昨年度に続き2回目。
講義する佐藤会長