全国修学旅行研究協会(全修協、岩鍚正司理事長)は7月30日、東京のホテルグランドヒル市ヶ谷で「第32回全国修学旅行研究大会」(文部科学省、観光庁、日本旅行業協会、近畿日本ツーリスト協定旅館ホテル連盟、観光経済新聞社など後援、近畿日本ツーリスト協賛)を開いた。学校からの実践発表として、宮城県石巻西高等学校が「災間を生きる〜心のケアと特別活動(防災交流、修学旅行)」と題して講演。東日本大震災で被災した生徒らへの「心の教育」の実践例を述べた。
石巻西高校は東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県東松島市に位置。津波の直接の被害はなかったものの、周辺の住民を受け入れる避難所や、遺体を安置する仮安置所となり、教諭らもその対応に追われた。最大で700人の遺体を安置。避難所運営は44日間に及び、学校の再開は例年より約1カ月遅れた4月21日になった。
学校は生徒の心と体の状態を確認するため、アンケート調査を実施。生徒からは「むしゃくしゃ、イライラ、すぐにかっとなる」「何をやるにも集中できない」「自分に自信が持てない」などの回答が目立ち、生徒の喪失感、無力感の克服が学校の一番の課題となった。
学校は長野県、兵庫県など、他県の小、中、高等学校との「防災交流」を積極的に実施。県外の児童・生徒らに、同校の生徒自らがその被災体験を述べた。「自身の経験や思いを伝えることで、生徒が自己有用感を感じるようになった」と同校の服部高浩、佐藤淳志両教諭は述べている。
さらに生徒らが防災見識を深め、郷土復興の担い手となることを目的に、関西方面へ向かう修学旅行の訪問先に、阪神淡路大震災を学ぶ神戸市の「人と防災未来センター」を追加した。「災害の音や映像を見るだけで足が震える子供もいる」ため、防災を学ぶコースは選択制にしたが、学校の予想を上回る生徒が同コースを選択した。
生徒は「東日本大震災を経験した1人として、自分の体験したことをたくさんの人に伝え、今後何ができるかを自分なりに考えたい」「自分たちの街も神戸のように復興させたい」などと感想を述べている。
同校は今後も一連の取り組みを継続するとともに、他校からの修学旅行の受け入れ、交流事業もできるだけ進めていきたいとしている。
事例発表する石巻西高校の服部、佐藤両教諭(壇上)