帝国データバンクが5月に行った全国企業対象の景気動向調査によると、同月の景気動向指数(景気DI=0〜100、50が判断の分かれ目)は前月比1.0ポイント増の31.7で、5カ月連続で改善した。外需や緩やかな自律回復の動きで、幅広い業種で改善が続いている。ただ、内需関連業界は回復の遅れが鮮明となっており、同社では「国内景気の回復が続くが、やや減速感が漂い始める」とコメントしている。
調査は全国企業2万1362社を対象に行い、1万806社から有効回答を得た。
DIを10業界別にみると、製造、小売、サービスなど9業界が改善。金融の1業界のみ悪化した。
製造は前月比1.1ポイント増の34.5。輸送用機械・器具製造が14カ月連続で改善したほか、電気機械製造、化学品製造などが改善。10業界中、2カ月連続で最も高いDI値となった。ただ、同月の改善幅は今年に入り最小にとどまった。
小売は同1.5ポイント増の31.6。低水準ながら、飲食料品小売、繊維・繊維製品・服飾品小売、各種商品小売などが改善した。ただ、これまで政策支援で底上げされてきた家電・情報機器小売、自動車・同部品小売は売上数量や販売単価の下落が響くなどしてそれぞれ5カ月ぶり、3カ月ぶりに悪化した。
サービスは同0.8ポイント増の32.3。5カ月連続で改善した。飲食店、教育サービスなどが改善。ただ、娯楽サービスが前月と同水準で、旅館・ホテルは悪化した。サービス全体と、サービスの中の8業種はリーマン・ショック前の水準に回復していない。「『小売』とともに、内需の回復遅れを浮き彫りとしている」(帝国データバンク)。
農・林・水産は同1.3ポイント増の33.8。4カ月連続で改善したが、前月の真冬並みの寒気の影響による農作物の生育不良や、宮崎の口てい疫の拡大で、改善幅は縮小傾向が続いた。
企業の規模別では、大企業が同1.4ポイント増の33.3、中小企業が同0.8ポイント増の31.2、小規模企業が同0.5ポイント増の27.4。すべてが5カ月連続で改善した。ただ、大企業に比べて中小企業と小規模企業の回復遅れが鮮明となった。
大企業と中小企業の規模間格差は2.1ポイントで、同0.6ポイント増加。5カ月ぶりに拡大した。
地域別では、10地域すべてが5カ月連続で改善した。南関東は同1.0ポイント増の33.4。域内の製造や小売、サービスが堅調に推移し、4カ月連続で全10地域中、最も高いDI値となった。
九州は同0.2ポイント増の31.0。宮崎の口てい疫拡大の影響で農・林・水産が11.9ポイントの大幅減。外出自粛やイベントの中止など内需への悪影響が広がり、域内全体の改善幅は10地域中最小となった。
旅館・ホテルは 5カ月ぶり悪化
旅館・ホテルの5月の景気DIは24.8で、前月の27.9から3.1ポイント悪化した。2月から4カ月連続で改善していたが5カ月ぶりに悪化した。
リーマン・ショック前の08年8月は30.7で、同水準にはまだ回復していない。