Go Toトラベル事業の全国一斉停止が続く中、感染が比較的落ち着いている地方の自治体が域内の住民らを対象にした独自の観光キャンペーンを再開したり、新たに開始したりする動きが広がっている。独自の施策で苦境にあえぐ宿泊など観光事業者を支援する。
高知県は8日、同県の在住者を対象にした「高知でお泊まりキャンペーン」「高知観光リカバリーキャンペーン交通費用助成事業」を始めた。22日からは対象を、同県を含めた四国・中国地方9県の在住者に広げる。
お泊まりキャンペーンは「宿泊ギフト券プレゼント型」と「宿泊割引クーポン型」の二つがある。宿泊ギフト券型は県内在住者限定で、応募者の中から抽選で5千人に5千円分のギフト券をプレゼントするもの。券は県内約200軒の宿泊施設で4月28日までの宿泊(29日チェックアウトまで)に使える。2月20日から28日までの応募期間中、2万1433人から応募があった。
もう一つの割引クーポン型は、OTAを通して対象の宿泊施設を予約した人に、施設の価格帯に応じた額(最大3万円)のクーポンを発行するもの。対象施設は県内約230軒で、宿泊対象期間は今月21日まで(22日チェックアウトまで)。予約は8日午前10時に開始したが、用意した千人泊分がその日のうちに完売した。
割引クーポン型は22日から、四国・中国地方9県の在住者に対象を広げて実施。同日午前10時から予約を受け付ける。用意するクーポンは4千人泊分。宿泊対象期間は4月6日まで(7日チェックアウトまで)。
高知県はさらに、県内の宿泊を伴う旅行に対して交通費を最大5千円交付する事業を8日に再開した。当初は県内在住者限定だが、こちらも22日から対象を9県在住者に広げる。
交通費の交付事業はGo Toトラベル事業に連動して行っていたが、同事業の全国一斉停止に合わせて昨年12月28日から一時停止していた。同県観光振興部観光政策課は「県内観光は本当に厳しい。Go Toが再開しない現在、県独自で動かなければと、(Go Toとの連動キャンペーンでも)例外的に事業を再開した」と話している。
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新潟県は8日、県民向けの宿泊割引キャンペーン「泊まっ得! にいがた県民割キャンペーン」を新たに始めた。同日から6月30日まで(7月1日チェックアウトまで)の1人1泊5千円以上の宿泊で2千円を割り引くもの。Go Toトラベルや、県内市町村などが行う他のキャンペーンとの併用が可能だ。
県内707軒(11日時点)の宿泊が対象。利用者は宿に電話やサイトで直接、または旅行会社、OTA経由で予約をした後、キャンペーンの特設サイトにアクセスし、宿泊補助券の発行手続きを行う。
県民対象の宿泊割引キャンペーンは昨年も2回にわたり実施。今回で3回目になる。「思った以上に好評で、多くの方に利用いただいている」と同県観光局観光企画課。
事業は予算に達し次第終了する。同県は予算額を明らかにしていないが、12日時点でまだ余裕があるという。
鳥取、島根の両県は、共同のキャンペーン「♯WeLove山陰キャンペーン」を1日に開始。両県民が域内の対象施設を利用する場合、その費用を割り引く。宿泊施設は5千円を上限に半額を割引。観光施設と体験型観光メニューも半額などの割引がある。
期間は31日まで(宿泊は31日チェックアウトまで)だが、国のGo Toキャンペーンが再開した場合は終了するとしている。
静岡県も県民対象の観光促進キャンペーン「バイ・シズオカ~今こそしずおか元気旅」を8日に再開した。県内の対象宿泊施設の予約を県内の旅行業者店舗で行った場合、宿泊料金の半額以内、1人1泊最大5千円を割り引く。22日からはOTAを活用した宿泊クーポンの配布事業を行う。
同県ホテル旅館生活衛生同業組合は、キャンペーンの効果に大きな期待を寄せている。同組合によると、Go To事業が本格化した昨年10、11月は宿泊者数が前年の8割まで回復。個人客にとどまらず、平日のシニア層など、団体客も回復の兆しを見せたという。
「宿泊促進キャンペーンの実施は、キャンペーンによる直接の効果だけでなく、シニア層の旅行機運を高めることと、平日の団体旅行を増やすことにも大きな影響を及ぼすと考える」と同組合は言う。