全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連、佐藤信幸会長)はこのほど、「高齢者向け賃貸住宅等研究委員会」を設置し、その第1回会合を7月21日、東京の全国旅館会館で開いた。経営環境の悪化で廃業を余儀なくされる旅館経営者が増える中、経営者が需要の拡大が見込まれる高齢者向け賃貸住宅へ既存の施設を改修、利用する場合の問題点を研究。その内容を全国の旅館組合員に周知させる。全旅連では組合員に異業種への転業を薦めるものではないとしながらも、経営者の経営安定、地域社会への貢献などの観点から同事業を推進する。
総務省の統計によると、65歳以上の高齢者人口(09年10月時点)は過去最高の2901万人。厚生労働省や国土交通省では高齢者の居住の安定確保に向けた事業を推進し、全国で行政の補助を受けた民間による「高齢者向け優良賃貸住宅」(高優賃)、「高齢者専用賃貸住宅」(高専賃)などの施設が運営されている。すでに旅館をバリアフリーに改修して高齢者向け賃貸マンションとして運営している事例もある。
全旅連ではかねて、旅館組合員向けに旅館経営再建に向けたコンサルティング事業を行っているが、今回は宿泊業にこだわらない広い視野で経営者の経営安定に向けた可能性を探る。
また増え続ける高齢者の居住の安定や、施設の廃業に伴う雇用と景観の悪化を抑えるなど、地域社会への貢献の観点からも、同事業を推進する。
今後約1年間、実際に運営されている高齢者向け施設への視察や、専門家の意見を聞くなどして、法律上の問題や経費など、旅館を高齢者向け住宅に改修、利用する際の問題点を研究、整理。その報告書を作成し、来年中に組合員に配布、公表する。
ただ、組合員の増強を目指す全旅連では、旅館組合員に転業を薦めるものではなく、あくまでも経営のひとつの方向性を示すものとして参考にしてもらいたい意向だ。
初会合では、委員長に大木正治・全旅連会長代行、副委員長に野澤幸司・同厚生委員長・シルバースター部会長、多田計介・同厚生副委員長・シルバースター副部会長が就任。このほか会には全旅連側の役員と厚生労働省健康局・老健局、国土交通省住宅局、中小企業庁経営支援部、高齢者施設経営のコンサルタントらが出席した。
また当日は東北地区や首都圏で老人ホームを運営する社会福祉法人敬寿会の金澤敬一理事長を招き、高齢者の受け入れ現場についての講演を聞いた。