全日本かるた協会、「世界に広がる競技かるた シンポジウム」をかるたの聖地・大津で開催


 全日本かるた協会は13日、「世界に広がる競技かるた シンポジウム」をかるたの聖地・大津で開催した。

般社団法人全日本かるた協会は、2020インターナショナル小倉百人一首かるたフェスティバルとして、東京都文京区、福井県あわら市、滋賀県大津市の3区市で開催するイベントのひとつ「世界に広がる競技かるた シンポジウム」を6月13日(日)、滋賀県大津市の近江神宮・近江勧学館にて開催しました。

開催にあたっては、会場内の観客人数を制限し、別会場へのモニター設置のほか、YouTubeライブ配信(視聴回数:約3,500)も実施しました。

*2020インターナショナル小倉百人一首かるたフェスティバルは、東京2020 NIPPONフェスティバル共催プログラムに採択されています

■シンポジウムの様子はYouTubeでもご覧いただけます。

https://www.youtube.com/watch?v=5ZJ_eoJnfcg

会場 近江勧学館(浦安の間)

本シンポジウムでは、競技かるたを題材とした映画「ちはやふる-結び-」で花野菫役を演じた女優・優希美青さん、関西を中心に多くのカルチャーセンター等で講師を務め、競技かるたのイベント等でも活躍する歌人・林和清さん、百人一首観光プロモーション事業を担当する大津市観光振興課・佐藤夏姫さんが登壇。

さらに海外からのリモート出演として、「第1回おおつ光ルくん杯競技かるた世界大会」優勝チームからカンタン・マヤールさん、アマンディン・シャンバロン・マヤールさん(フランス)、アジアの中では競技かるたの歴史が比較的新しいインドネシアからアムリル・マルフさん(インドネシア)、全日本かるた協会で海外普及を務めるストーン睦美(アメリカ)、計7名が、世界各地で愛好者が増える競技かるたの海外の実情や活動の展望について語り、会場からの質問にも答えていきました。

■第1部では2018年・2019年開催「おおつ光ルくん杯競技かるた世界大会」や、海外での実情を紹介しました。

漫画・アニメ、実写映画化もされた「ちはやふる」をきっかけに競技かるたを始めたという海外競技者も多く、現在、16の国と地域に22のかるた会が存在(協会把握)しており、最近ではフィリピンの高校生がオンラインで競技かるたのグループを作るなど、コロナ禍においても新たなスタイルで広がりを見せています。

自国で独自に競技かるたの活動をするロシアでは、「日本文化に興味を持つ人が多く、百人一首もロシア語に翻訳されており、人気の高さが窺える」、また、タイでは「バンコク市内の学校に日本語専攻が増え、日本語や日本文化を学ぶ人が多くなったことから競技かるたへのハードルが下がってきた」など、各国からのコメントも紹介されました。

また、「おおつ光ルくん杯競技かるた世界大会」がきっかけとなり、他国の選手と交流ができた、言葉を超えてかるたで繋がりが持てた、さらに大会での優勝という明確な目標が持てた、などの喜びの声が聞かれました。

海外では、各国在住の日本人がかるた会を立ち上げる国以外に、独自で競技かるたを学び、活動している国も増えています。いずれの場合も日本語や日本文化に興味を持つ人達がきっかけとなっているため、日本語への抵抗はないものの、文字を覚えること、歌を覚えることはやはり難しいと感じる人も多くいるようです。

フランスのカンタンさん、アマンディンさんは、「競技かるたは日本語が流暢でなくてもできる。ただ、ひらがなを知る・読める、日本語の音に慣れる、さらには日本文化を知ることが大切」と語りました。

また、インドネシアのアムリルさんは「競技かるたから日本語や日本文化に興味を持つ人も増えてくると思っている。アニメなどのモダンな文化とは違い、競技かるたという伝統文化を広めるには、札を取るときの美しさや楽しさを知ってもらうことも重要。そこに挑戦したい」との考えに、映画撮影の際に素早く美しく札を払う練習をしたという女優の優希美青さんからは「体幹がなければ美しさは保てないので、体幹を鍛えて、指先まで意識して、そのうえ文字も覚えることは本当に大変。でも札が取れた時は楽しい。」と当時を振り返り、「興味を持ってもらうには見た目の美しさも大切だと思う」と賛同しました。

海外リモート出演(フランス)

海外リモート出演(インドネシア)

海外リモート出演(アメリカ)

■第2部では、外国人が感じる競技かるたの魅力や文化としての広がり、今後の展開について意見を交わしました。

競技かるたは伝統文化にスポーツの要素が加わった他に類を見ない珍しいものです。

海外における競技かるたの魅力は、「日本文化・日本文学」への興味、日本語がわからなくても戦略的に楽しめる「ゲーム性」、美しいスポーツとしても魅力を伝えた「ちはやふる」の人気が挙げられます。

いずれの切り口から始めても、歌を覚え、その歌の意味を知り、歌人の心情に寄り添ったり、情景を思い浮かべたりするなかで、日本文化に興味を持つ競技者も、特に海外では多いのが実情です。

大津市で観光プロモーションを担当してきた佐藤夏姫さんは、今後、さらに海外への普及を図るには「オンラインの活用」の重要性を指摘。百人一首の様々な側面を通じて、海外で大津の魅力をさらに知ってもらいたいとし、優希美青さんは海外の選手の多くが「ちはやふる」を見て競技かるたを始めたことを踏まえ、「競技かるたを描いた新たな作品」が生まれることへの期待を語りました。

歌人の林和清さんは「和歌の歴史は古く日本文化へさまざまな影響を与えてきた。百人一首・和歌を通じて海外の方々が日本文化を知ることは大切で良いこと」とし、歌人たちの興味深いエピソードも交えながら「海外の人が興味を持ってくれる百人一首は、日本文化をひらく扉になる。これから海外で百人一首が広がっていくことを考えれば、日本人がもっと和歌の勉強をしたほうが良い」と思いを語りました。

また参加者からは「百人一首を使った競技かるたの広がりという点において、競技かるたの競技者だけでなく、観戦する機会や人が増えることが裾野を広げると思う。百人一首・日本語の美しさを知るよいきっかけになった。」という声がありました。

海外での愛好者が増えてきたとはいえ、まだまだ競技人口は少なく、練習量を増やす、強い選手との対戦環境を整えることが現状の課題です。ただ、日本の選手が海外の選手との交流を図る、海外でも受講できるオンラインでの講習会などを増やしていくなど、様々な側面から海外での練習環境を整えられれば、将来、日本以外の国から名人・クイーンが誕生する可能性にも繋がるとの大きな期待が、出席者から示されました。

 
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