史跡、スキー、名水の町 若者ら対象に多くの事業も


龍ヶ沢湧水

 福島磐梯町の観光名所の一つ、慧日寺(えにちじ)は、平安時代の名僧「徳一(とくいつ)」によって建立された寺院で、1千年を越す歴史を誇った東国きっての古刹(こさつ)。明治初めに廃寺となった寺跡は、「慧日寺跡」として国指定の史跡となっている。現在町による史跡整備が進められており、発掘調査の結果をもとに2008年に金堂、翌09年に中門の建物が復元され、「会津仏教文化発祥の地」として栄えた往年の姿を今に伝えている。

 近くには慧日寺の歴史を記した「磐梯山慧日寺資料館」、古民家を改装した観光案内所兼カフェ「庄九郎亭」が整備されている。
 星野リゾートが運営するスキー場「アルツ磐梯」は、この冬から「猫魔スキー場」(北塩原村)とリフトで連結され「ネコマ  マウンテン」として新たにオープン。リフト13基、33コースを有する国内最大級のゲレンデとなった。磐梯町側の南エリア(旧アルツ磐梯)では、磐梯山と猪苗代湖を望む絶景を眺めながらの滑降が楽しめる。「この地域の魅力を発信し、コロナ禍で停滞したインバウンドのお客さまの取り込みに力を入れたい」と同町商工観光課の遠藤哲主査。

 町は雪解けの水を集めた清水や清らかな滝が点在する「名水の町」として知られる。磐梯山西麓の「磐梯西山麓湧水群」は環境省選定の「日本の名水100選」の一つ。代表的な「龍ヶ沢湧水」は、古代から干ばつが起きても枯れることがなく、そのため大規模な雨ごいの儀式がたびたびこの地で行われていた。湧水群の地下水は町の全世帯に飲料水として配水されるほか、かんがい用水に利用。磐梯山慧日寺資料館の庭園にも引水され、給水に来る自然水愛好家でにぎわう。町の名水を巡るトレッキングも人気という。

 県道猪苗代塩川線沿いにある「道の駅ばんだい」(愛称=徳一の里きらり)は、ドライブの休憩や土産探し、観光の拠点として09年にオープン。年間およそ100万人が利用する人気のスポットだ。町内に二つある酒蔵のお酒も扱う日本酒コーナー、登山グッズの販売コーナー、ドッグランが特に人気。

 町には年間約118万人の観光客が訪れていたが、東日本大震災、それに伴う福島第1原発事故の風評で大きなダメージを受けた。払拭への努力で客数は回復していたものの、コロナ禍で再び厳しい状況となった。

 コロナ禍からの脱却が図られつつある現在、力を入れているのは若者へのアピールだ。ばんだい振興公社が企画した「農泊就労体験×DX戦略×バケーションで創出する第2のふるさと」が22年、観光庁が進める「第2のふるさとづくりプロジェクト」のモデル実証実験に採択され、農家での就労体験と宿泊、交通がセットになった旅行商品をJRと連携して企画した。

 思うような集客はならなかったが、「考えに共感して、協力いただいた農家をはじめ町内事業者の方が多くいらっしゃったことが事業の成果の一つ」とばんだい振興公社企画開発グループの鈴木孝之グループマネージャー。

 このほか地元の大学と連携した、町の課題の解決策を考えるフィールドワークや、町内に工場があるカメラレンズのメーカー「シグマ」とタイアップした町歩きと撮影のイベント「フォトウォーク」など、町の”愛着人口”を拡大させる多くの事業に精力的に取り組んでいる。


龍ヶ沢湧水

 
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