【道標 経営のヒント72】合理的配慮とは 福島規子


道標 経営のヒント 72

 そのしゃれたカフェの入り口には3段ほどの階段があった。1人でランチにやってきた車いすの女性が女性スタッフに声をかけた。

 「すみません。私もお店に入りたいんですが」
 女性スタッフは申し訳なさそうに言った。

 スタッフ「大変申し訳ないのですが、いま、お店が混んでいて車いすを上げるお手伝いができないんです」

 女性客「…」

 スタッフ「それにうちは店内が狭くて…。入店されると他のお客さまのご迷惑にもなりますし…」

 女性客「(迷惑?)」

 「他の客の迷惑」という一言は心に刺さる。

 また、障害者が、障害を理由に利用を断られるのは宿泊施設や飲食店だけではない。

 精神疾患者や車いす利用者などは、障害を理由に賃貸住宅の入居を拒否されることもある。「他の住人に迷惑がかかる」「何かあった時にどうするのか」「障害者が1人で暮らすのは無理」といった理由にはならない理由を延々と説明される。ペットはOKなのに人間は駄目なのか、といいたい。

 今年4月に障害者差別解消法が施行され、行政機関や行政関連の事業者には、障害者が障害を理由に差別されることがないよう合理的配慮を行うことが義務付けられた。 

 合理的配慮とは、お金や人手に限界があるなかで、どのような工夫ができるかを考え障害者が不快に感じたり、不利益になったりしないよう配慮することである。その配慮が施設側にとって過度な負担になる場合は、申し出を断ることができるが、その際は、断る理由を相手に説明する義務がある。

 冒頭の例でいえば、車いすの客が入店しやすいようスロープを設置するか、複数の店員で車いすを持ち上げるというのが合理的配慮といえよう。

 ただし、スロープの設置費用や車いすを上げるために新たに人を雇う場合、それらの費用を「過度な負担」とみるかどうかは、明確な答えは示されていない。今後、障害者を交えて議論を重ねていく中で、合理的配慮の基準が示され、それが業界内のスタンダードとして普及していくと考えられる。

 実際に、日本の宿泊施設におけるバリアフリー度は施設面でもかなり遅れている。

 国交省はバリアフリー法とは別に定めた省令で200室以下のホテルは2%、200室を越える場合は1%に加え2室を障害者用客室にすることを求めてはいるが強制力はない。

 また、段差を結界と捉える日本旅館では、文化的背景との兼ね合いも課題だ。

 いずれにせよ、近い将来、民間事業者にも合理的配慮が求められるようになるのは間違いない。

 
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