地域経済活性化のため、観光に目を向ける商工会議所が増えている。日本商工会議所が全国約500の商工会議所を対象に観光振興への取り組みを聞いたところ、350を超える事例が集まった。自然、伝統文化、イベントの活用や農商工連携、食を切り口にした観光資源の開発など、地域資源の掘り起こしによる観光振興が目立つ。海外の旅行会社訪問などインバウンド振興に熱心な商工会議所もある。日商は、「新たな動きとして、都市型観光や、観光を『交流産業』として位置付ける取り組みも見られる」という。
調査は6〜8月に実施した。340商工会議所から回答があり、355の観光振興事例が集まった。日商はこれら事例を各地にフィードバッグし今後の取り組みの参考にしてもらう。
地域のイベントによる観光振興では、犬山商工会議所(愛知)が犬山市観光協会などと実施している「観光客誘致まちなか365作戦」がある。観光客を中心市街地に1日1千人、365日誘致することを目的に、「犬山城下まちまつり」や落語家による「町家寄席」などの事業を実施している。
豊後高田商工会議所(大分)は「昭和の町」および市全体の観光PRと誘客促進を目的に、行政などと実行委員会を組織し「昭和の町レトロカー大集合」というイベントを実施。
九州地方はもとより、広島や愛媛などから約100台のレトロカーと約150人のオーナーが参加した。クイズラリーのほか、ボンネットバスを使った周遊観光も行われ、「08年度は約5千人が集まり、PR効果も大きい」と日商は見る。
食を切り口とした新たな観光資源の発掘にも取り組んでいる。
佐久商工会議所(長野)は佐久拉麺会などと連携して、信州味噌発祥の地とされる佐久安養寺を資源とした「安養寺ら〜めん」を開発。積極的に情報発信した結果、マスコミでも取り上げられ、圏外からの客も増え、行列ができるほどの盛況だったという。
メディカルツーリズムに力を入れているのが前橋商工会議所(群馬)。重粒子線ガン治療などの高度医療を通じて他都市からの関係者の受け入れを推進。健康医療をキーワードに、多様な人々が世代を超えて触れ合えるまちづくりを目指している。
将来的には医療機関、周辺の温泉地や観光スポット、農家、バス業者らが「健康と医療」をテーマに連携して“前橋モデル”のバスツアーを実施し、新しい観光事業の礎創出を図る。事業化に向け産学官民一体となったスキーム作りを勧めている。
外国人観光客が多く訪れる京都。京都商工会議所は外国語で対応できる飲食店を増やすことを目的に、英語メニュー作成データベースを整備。中国語、韓国語でのデータ化も計画している。07年 11月には英・中・韓対応の接客ハンドブック「3カ国語でおもてなし」を発行している。
新たな動きとされる都市型観光の事例の1つに広島商工会議所(広島)の「ひろしま夜神楽」がある。伝統芸能として親しまれている夜神楽の上演を、市指定重要文化財(被爆建物)である旧日銀広島支店で実施。週末に延べ6回上演し、外国人観光客を含め約3千人を集めた。
将来的には、市民・行政・経済界などが一体となって取り組み、広島の新たな夜の賑わいとなるよう、定期上演化を目指しているという。
レトロカーも台数が集まれば集客の大きな手段だ(豊後高田市のホームページより)