国土交通省と経済産業省は12日、外国人富裕層の旅行者誘致に向けて実施したラグジュアリー・トラベルマーケット調査の報告書をまとめた。情報提供やプロモーション活動が不十分で、訪日旅行への動機付けが弱く、受け入れ態勢も整備されていないと課題を指摘。海外バイヤーと国内の観光素材を結びつけるコーディネーター役の個人、企業を組織化することや、日本独自の文化や食などの観光素材を「本物」というキーワードでブランド化して売り込むことなど、富裕層向けのビジネスモデルを構築する必要があると提言した。
両省では昨年度、民間有識者などでつくる研究会(座長=石森秀三・北海道大学観光学高等研究センター長・教授)を設置して検討した。国内外の旅行会社などにアンケートやヒアリングを実施した。
世界で金融資産100万ドル以上の個人資産家は過去10年で倍増し、05年には870万人。欧米を中心とした旅行市場では、レジャー目的の旅行で年間1億円以上消費する富裕層が10万人を超えるとされるが、訪日旅行への誘致は立ち遅れ、市場拡大には課題も多い。
報告書は、国内に富裕層向けのビジネスモデルが確立されていないと指摘。受け入れ態勢では、(1)コーディネーター的役割を担う個人、企業の国内外での認知度の低さ(2)海外バイヤーと観光素材を結ぶ情報や送客のネットワークの未整備──など。プロモーション活動では、(2)著しい情報提供の欠如(3)ニーズに合致したコンテンツの見せ方が確立されていない──などの問題点を挙げた。
受け入れ態勢の整備では、海外バイヤーと国内観光素材の“橋渡し役”としてコーディネーターの役割を果たす個人や企業を組織化し、窓口を明確にした上で、情報や送客のネットワークを構築するように提言。観光素材の魅力を伝えるためのガイドなどの人材育成も課題に挙げた。
「本物」をキーワードに観光素材をブランド化することも重要だと提言。富裕層を顧客とする欧米、香港などの海外バイヤー55社へのアンケート結果では、情報提供を期待する日本の観光素材には、特別な文化体験や行事・祭事、食、美術・工芸品、宿泊施設などが上位に入った。海外でのヒアリングなどでも、「本物」を求めるニーズは顕著で、富裕層に特化したプロモーション活動の強化を求めた。
また、富裕層市場を対象にした海外の旅行見本市への出展、国内での見本市開催もプロモーション活動に有効だと提案している。