国際観光旅館連盟(佐藤義正会長、1278会員)は、旅館の客室流通の高度化に関する実証事業を観光庁の補助金を受けてスタートさせる。平日などの潜在的な宿泊需要を掘り起こすため、工夫を凝らした宿泊プランを各旅館に企画させ、11月中に立ち上げる独自の「場貸し」形態の予約サイトを通じて直販してもらう。旅行会社やネットエージェントに依存せず、旅館自身の企画力、営業力を強化するのが狙いだ。
国観連の実証事業は、観光産業の新しいビジネスモデルづくりを支援する観光庁の観光産業イノベーション促進事業に採択された。事業名は、「旅館客室流通効率化・高度化事業」。民間企業3社との共同事業で実施する。サイト制作や宣伝は、総合情報サイトを運営するオールアバウト、予約システムの提供はジェイヤド、商品登録などの旅館対応と消費者対応は日本ベストサポートが行う。
開設する宿泊予約サイトの名称は「旅館プレミアムアウトレット『宿あそび』」。平日やオフシーズンの客室稼働率は休前日に比べて低く、旅行会社に販売委託しても売れ残る客室が多いことから、旅行会社などの販路では販売しにくい、多様なニーズに対応した宿泊プランをこのサイトを通じて流通させる。
具体的な宿泊プランのイメージとしては、泊食分離型の商品や宿泊客の好みに応じて食事のメニューや分量が選べる商品など、通常の1泊2食付きとは異なる商品。例えば、大都市近郊の観光地、温泉地の旅館では、平日に1日しか休めないサービス業などに従事する層を狙い、深夜にチェックインして翌日に食事や温泉を楽しんでもらう商品などを想定している。
今回の実証事業で使用する予約システムは決済機能は持たないが、泊食分離や連泊など宿泊客の選択に対応した予約ができる形態にする。旅館にはシステムの導入などの必要はなく、旅館との間の商品登録や予約通知はファックスやメールを使う。実証事業のため、成約手数料などは取らない。
実証期間は、11月下旬〜来年1月下旬の2カ月間の予定。国観連会員旅館から50〜100軒の参加を見込んでいる。目標はウェブサイトの閲覧が100万ページビュー、予約は1千件程度。旅館50軒が参加した場合、1軒当たり20件の成約を目指すことになる。
国観連の佐藤会長は「旅館の営業力強化に向けた第一歩となる事業と位置づけている。実証事業を通じて宿泊プランづくりや直販の仕組みを検証して、客室流通に新しいビジネスモデルを構築したい」と意欲を示す。近く会員旅館に対し、宿泊プランの事例などを示して参加を募る予定だ。
国観連は、実証事業の結果を分析した上で、システムへの決済機能の追加、商品ラインナップの拡充などを検討、来年度以降も事業を継続させていきたい考えだ。