国際かんがい排水委員会(ICID)日本国内委員会、世界かんがい施設遺産の新規申請施設2カ所を決定 農水省発表


 農水省は4月25日、国際かんがい排水委員会(ICID)日本国内委員会が、世界かんがい施設遺産として申請する新規候補2施設を決定したと発表した。今回選ばれたのは熊本県山鹿市の「湯の口ため池・井手」と大分県竹田市の「竹田のかんがい用水群」の2カ所だ。両施設は今年9月にマレーシアのクアラルンプールで開催される第76回ICID国際執行理事会での認定が期待される。日本からはこれまでに54施設が世界かんがい施設遺産に登録されている。

江戸時代から活躍する歴史的かんがい施設

 申請が決まった「湯の口ため池・井手」は1857年に供用を開始。「竹田のかんがい用水群」はさらに古く1663年から稼働している歴史的施設だ。ICID日本国内委員会は昨年12月18日から今年2月19日までの間、世界かんがい施設遺産の国内申請を受け付け、審査の結果、この2施設をICID本部へ申請することを決定した。

 世界かんがい施設遺産とは、かんがいの歴史・発展を明らかにし理解醸成を図るとともに、施設の適切な保全に資するために、歴史的なかんがい施設をICIDが認定・登録する制度で、2014年度に創設された。登録により、かんがい施設の持続的な活用・保全方法の蓄積、研究者・一般市民への教育機会の提供、施設の維持管理に関する意識向上に寄与するほか、施設を核とした地域づくりへの活用が期待される。

 対象となるのは建設から100年以上経過した施設で、ダム、ため池等の貯水施設、堰、分水施設、水路、排水施設、古い水車などが含まれる。供用廃止された施設も対象となる。登録基準は9項目あり、かんがい農業の画期的な発展や食料増産、農家の経済状況改善に資するもの、構想、設計、施工、規模等が当時としては先進的、卓越した技術だったもの、設計・建設における環境配慮の模範となるものなど、1つ以上を満たすことが条件だ。

世界で活躍する国際かんがい排水委員会

 ICIDは「International Commission on Irrigation and Drainage」の略称で、かんがい排水に係る科学的・技術的知見により、食料や繊維の供給を世界規模で強化することを目的に1950年に設立された自発的非営利・非政府国際機関だ。本部はインドのニューデリーに置かれ、日本は翌1951年に加盟している。現在、82の国・地域が加盟し、各国は国内委員会を設置している。

 組織構成は、毎年開催される国際執行理事会、3年ごとに開催される総会をはじめ、常任委員会、委員会、地域作業部会、作業部会・タスクフォースから成る。日本国内委員会は学術経験者等をメンバーとし、渡邉紹裕委員長(京都大学名誉教授)ら19名の委員で構成。かんがい・排水・洪水等に関する知見の情報収集・発信を行っている。

 ICIDへの申請の流れは、まず施設管理者等が日本国内委員会に申請書を提出。国内委員会は申請書の審査を行い、申請施設を決定し、ICID本部に申請書を提出する。ICID本部では申請施設の審査を行い、認定・登録を決定する。今回の2施設もこの流れに沿って9月の認定審査を受ける予定だ。

 世界全体では現在177施設が登録されており、国別では日本の54施設が最多。次いで中国の38施設、インドの22施設、スリランカの12施設、イランの10施設と続く。その他、韓国、イラク、イタリア、タイ、オーストラリア、インドネシア、エジプト、メキシコ、アメリカ、トルコなどの国々も複数の施設が登録されている。

 日本の54施設を都道府県別に見ると、青森県の「稲生川」「土淵堰」、岩手県の「照井堰用水」、宮城県の「内川」「南原穴堰」、山形県の「北楯大堰」「山形五堰」、福島県の「安積疏水」、茨城県の「十石堀」、栃木県の「那須疏水」、群馬県の「雄川堰」「長野堰用水」「天狗岩用水」、埼玉県の「見沼代用水」「備前渠用水路」、山梨県の「村山六ヶ村堰疏水」、長野県の「拾ケ堰」「滝之湯堰・大河原堰」「五郎兵衛用水」、静岡県の「深良用水」「源兵衛川」「香貫用水」「寺谷用水」「本宿用水」「北山用水」、新潟県の「上江用水路」、富山県の「常西合口用水」、石川県の「七ヶ用水」、福井県の「足羽川用水」、岐阜県の「曽代用水」、愛知県の「入鹿池」「明治用水」「松原用水・牟呂用水」、三重県の「立梅用水」「南家城川口井水」、滋賀県の「龍ヶ池揚水機場」、大阪府の「狭山池」「久米田池」「大和川分水築留掛かり」「寺ケ池・寺ケ池水路」「井川用水」、兵庫県の「淡山疏水」「西光寺野疏水路」、和歌山県の「小田井用水路」、岡山県の「倉安川・百間川かんがい排水施設群」「建部井堰」、山口県の「常盤湖」、香川県の「満濃池」、福岡県の「山田堰・堀川用水・水車群」、熊本県の「通潤用水」が登録されている。

 2023年の世界かんがい施設遺産登録表彰式は11月4日にインドのヴィシャーカパトナムで開催。2024年はオーストラリアのシドニーで9月に開催された。2025年は9月にマレーシアのクアラルンプールで開催される。

拡大

 

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒