国際会議のキャンセル防止へ、官民あげて情報発信


 東日本大震災に伴う国際会議などのキャンセルを防止しようと、観光庁や開催都市、産業界では情報発信を強化している。観光庁の調べでは震災以降、国際会議や見本市のキャンセルは全国で約60件に上る。関係機関では主催者への文書発出やウェブサイトを通じた情報提供に注力。取り組みが奏功し、予定通りの開催が決まったケースもある。今後の誘致も念頭に、MICE(国際会議など)の開催に対する不安の払しょくを目指す。

 観光庁によると、国際会議や見本市などのキャンセルは、被災県である宮城、岩手、福島、茨城の4県で10件、被災県以外の地域で50件に達している。海外3千人、国内2千人の参加が見込まれていた大型の国際会議としては、来年10月に横浜市で予定されていた世界疼痛学会(本部・米国)の会議が他国に開催地を変更したという。

 開催に直接的な支障がないのにキャンセルを検討する動きがあることから、観光庁、日本政府観光局(JNTO)、開催地の自治体やコンベンションビューローなどでは情報発信を強化。観光庁では、長官名のレター(文書)を主催者や主要な出展者などに80通以上送付した。レターでは開催地の生活や交通機関が平常通りで、会議の開催が日本の復興につながることなどを訴えた。

 関係機関のPRが奏功し、キャンセルが回避されたケースも。観光庁によると、海外6千人、国内1千人の参加が見込まれている国際血栓止血学会が予定通り7月に京都市で開催されることが決まった。海外1千人、国内200人の参加が見込まれる経営に関する国際的な学会も予定通り6月に名古屋市で開かれることになったという。

 観光庁のMICE推進担当参事官室では「MICEの国際見本市などへの出展を通じ、引き続き海外への情報発信を強化したい」と話す。今月24日にはドイツ・フランクフルトで開かれるMICEの大型見本市に日本ブースを出展し、官民を挙げてPRに努める。

 国際会議観光都市、横浜市も市長名のレターなどを発出しているほか、安全面での情報開示の態勢などをPRしている。パシフィコ横浜を会場とする国内外を含めたイベントでは、3月が予約35件に対しキャンセル27件、4月が72件に対し27件。「キャンセル率は落ち着きつつあるが、気を緩めることなく、先々の誘致を考えて不安の払しょくに力を入れていく」(市コンベンション振興課・矢野修司課長)。

 産業界も風評の沈静化に独自の取り組みを始めた。大型国際会議の運営などを手がけるコングレ(本社・東京都千代田区)のシンクタンク「MICE総研」は10日、日本でのMICE開催に特化した情報を発信する英語サイト「ジャパン・アフター3・11」を開設した。交通機関や放射線量などの最新情報に加え、震災後、国際会議出席のために訪日した外国人の生の声などを紹介して不安の解消に努めている。

 
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