円滑な出入国や滞在環境の整備に充当
外国人、日本人の出国ごとに千円を徴収する国際観光旅客税の徴収が7日に始まった。政府の2019年度予算案には、国際観光旅客税を財源とする予算500億円が計上されている。新財源は観光基盤の強化に充てられる。観光庁予算の中に485億円が一括計上され、このうち観光庁の直接執行分が233億5千万円、4省庁に移し替えて執行される分が251億5千万円となる。このほかに別枠で宮内庁の予算に15億円が充当されている。新しい観光財源の主な使途を見てみよう。
国際観光旅客税を財源とした予算は、18年度予算に3カ月分(19年1~3月)として60億円が計上されているが、年度を通じた計上は19年度が初めて。観光庁の19年度予算の総額666億円のうち485億円が国際観光旅客税からの充当分だ。
国際観光旅客税の使途は、訪日外国人旅行者数4千万人などの目標達成に向けた(1)ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備(2)わが国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化(3)地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上―の3分野の施策と定められている。
観光庁の19年度予算案に計上された国際観光旅客税財源のうち他省庁に移し替えて執行される主な施策を見てみる。
法務省・円滑な出入国の環境整備70億6千万円
出入国手続きの迅速化に向けて最新設備などを導入する。主な設備では、旅券のICチップ内の顔画像とカメラで撮影した顔画像を照合して本人確認を行う顔認証ゲートを増設する。主要空港の日本人の出国、帰国に導入されているが、外国人の出国にも活用する。
財務省・円滑な通関等の環境整備30億1千万円
税関検査に最先端技術を導入する。事前にアプリで携帯品を申告する電子申告ゲート、携帯品を調べる高性能機器などを配備する。ターミナル施設のない港には移動式検査装置なども導入する。
文化庁・文化資源を活用したインバウンドのための環境整備100億円
文化事業「日本博」を契機として文化財を生かしたインバウンド向け観光コンテンツを全国に創出するほか、文化財の多言語解説の整備、VR(仮想現実)などの先端技術を駆使した日本の歴史文化の発信、体験の推進などに充てる。
環境省・国立公園のインバウンドに向けた環境整備50億8千万円
国立公園の観光資源や滞在環境を整備。ICTなどを生かした自然観光資源の多言語解説、民間施設の導入を前提とした廃屋の撤去などを行う。また、外国人旅行者の訪問が多い新宿御苑で、全国の国立公園に関する情報発信を強化する。
宮内庁・三の丸尚蔵館の整備15億円
皇室費であるため、観光庁の一括計上分とは別枠だが、国際観光旅客税が充当される。皇室に受け継がれた美術品などを展示公開する施設として整備。19年に工事着手、22年に一部開館、25年に全館開館を予定する。
観光庁が直接執行する国際観光旅客税を財源とした主な事業は次の通りとなる。
観光庁・ICTの活用等による先進的プロモーション51億5千万円
訪日外国人の誘客拡大に向けてビッグデータやSNSの分析結果などを活用し、JNTOのウェブサイト上に閲覧者の属性や関心に沿ったコンテンツを自動表示したり、地方の観光資源をプロモーションしたりする。
観光庁・公共交通利用環境の革新等55億円
訪日外国人の地方への誘客拡大に向け、空港などから観光地に至るまでの交通機関、旅客施設の利用環境を整備。多言語案内、Wi―Fi、トイレの洋式化、キャッシュレス決済などの対応経費をセットで補助する。
観光庁・観光地の「まちあるき」の満足度向上30億5千万円
外国人旅行者が多い観光地の散策エリアを対象に多言語案内標識、Wi―Fi、小売・飲食店のキャッシュレス決済の対応などに補助金を交付。これらと一体で行う観光案内所や道の駅の機能強化、古民家などの歴史的資源の活用も支援する。
観光庁・地域の観光戦略推進の核となるDMOの改革23億円
DMO関連の事業を支援する「広域周遊観光促進のための観光地域支援事業」(一般財源予算13億9千万円)とは別に、インバウンドに対応したマネジメント体制が確立されたDMOの外部専門人材の登用や中核人材の育成などを支援する。
新財源を充当する予算案の編成に際しては、(1)受益と負担の関係から負担者の納得が得られること(2)先進性が高く、費用対効果が高い取り組みであること(3)地方創生をはじめとする重要な政策課題に合致すること―が重視されている。
使途の適正化について石井啓一国土交通相は12月28日の会見で、「事前、事後のチェックは、毎年度の予算編成の中で、民間有識者の意見も踏まえつつ、内容をしっかり精査するとともに、行政事業レビューや政策評価などを活用し、第三者の視点から適切なPDCAサイクルを回すことで政府全体で無駄遣いを防止し使途の透明性を確保する」と述べた。