地方自治体、DMO構築で態勢強化へ


 政府が10月27日に公表した地方創生交付金の対象事業で、DMO(観光地域マネジメント・マーケティング組織)の立ち上げに関わる事業が12道県、90市町村の44事業に上った。マーケティングなどの高い専門性を備えた観光地域づくりの中核組織として期待されるDMO。観光の推進態勢を強化できるか、地域の取り組みが注目される。

 政府の「まち・ひと・しごと創生基本方針検討チーム報告書」(6月策定)は、観光の推進態勢の現状について、「DMOの機能を一部有するプラットフォームは全国に数カ所存在するのみ」で、欧米の著名な観光地域で運営されているような多様な関係者をまとめ上げて事業を推進する態勢が確立されていないと指摘した。

 報告書は「日本版DMO」に必要な機能を育成の段階別に提示した。初期段階ではKPI(重要業績成果指標)やPDCAサイクルの導入、中期段階では本格的なマーケティングの実施、最終段階では安定的な財源の確保による自律的経営、専門的な人材の確保などを挙げた。

 政府が決定した地方創生事業の先行型交付金(先駆的事業分タイプⅠ)の観光分野の交付対象事業は188事業。このうち44事業がDMO関連で都道府県や市町村が広域または単独で取り組みを開始する。

 鳥取県、島根県が連携して取り組む山陰版DMO広域観光推進事業には1千万円の交付が決定。山陰版DMOの設立に向けた検討、広域周遊ルート策定の調査を行う。

 両県には広域観光組織として、インバウンドなどの振興を担う「山陰国際観光推進協議会」と国内観光の振興を担う「山陰観光推進協議会」があるが、推進態勢の強化に向けてDMOの設立について検討する。

 また、鳥取県では、県内の西部、中部、東部の各圏域でDMOの立ち上げに向けた動きがあり、各圏域への交付金も決定した。「各圏域との連携、役割分担なども検討していく」(鳥取県観光交流局観光戦略課)。

 瀬戸内エリアの7県は、せとうち観光(せとうちDMO)推進事業として1億7418万円。広島、山口、岡山、兵庫、香川、愛媛、徳島の7県で構成する「瀬戸内ブランド推進連合」を改組し、DMOの機能を持つ「一般社団法人せとうち観光推進機構」を来年4月をめどに設立予定。交付金を態勢整備に活用し、広域周遊ルートの形成を推進する。

 北海道の洞爺湖町、豊浦町、壮瞥町は、「洞爺湖有珠山ジオパーク資源を活用したDMO観光地域づくりの連携事業」として9438万円。世界ジオパークの登録地域の観光マネジメントを強化。「KPIに基づく成果を早期に上げたい。観光振興を雇用創出、定住や移住につなげる」(洞爺湖町総務部企画防災課)。

 群馬県みなかみ町は、本町観光会議(本町版DMO)運営事業として1500万円。今年7月に町長を議長とする「みなかみ観光会議」を設置し、観光振興策を官民挙げて議論している。「観光会議の議論を踏まえ、各種調査などを行いながら、みなかみ町版DMOのあり方を検討する」(みなかみ町観光課)。

 宮城県気仙沼市は、三陸沿岸地域の日本版DMO構築事業として1400万円。DMOの立ち上げに向けてマネジメント、マーケティングの機能強化のあり方などを模索する。「稼げる観光産業を支える組織の構築を目指したい」(気仙沼市産業部観光課)。

 政府の「まち・ひと・しごと創生基本方針」(6月閣議決定)では目標として5年以内に、初期段階のDMOを全国に50カ所程度、中期段階を10〜30カ所、最終段階を5〜10カ所構築することを掲げている。段階に応じた総合的な支援措置を講じると定めている。

 
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