昨年9月の北海道胆振東部地震は死者42人を出し、家屋の倒壊や道路、橋梁、水道施設の損壊など、震源地域を中心に大きな被害をもたらした。同時に道内全域が停電するブラックアウトも発生。道民の日常生活をはじめ、観光、生産、流通など北海道経済に多大な影響を与えた。
地震とブラックアウトの発生は、秋のベストシーズンを迎えた北海道観光を直撃。旅行客の宿泊キャンセルや旅行取り止めが相次ぎ、大幅な観光客減に直面し、宿泊キャンセル数が115万泊、観光施設などの入場料を含む損害額は356億円に上った。
こうした事態に北海道は官民一体で「元気です北海道」キャンペーンを展開、風評被害の払拭(ふっしょく)と観光客誘致に取り組んだ。国も「ふっこう割」の適用をいち早く決め、10月から実施して道の観光回復を支援してきた。
地震直後に大きく落ち込んだ道内の観光客数は、これらの取り組みを受けて10月には戻り始め、観光客の宿泊延べ数は11月に前年同月比105.3%、12月に同109.0%と前年を上回る状況が続いている。
特に落ち込みが大きかった訪日客は、延期されていた韓国やシンガポール、フィリピンからの航空便の就航も始まり、12月は宿泊延べ数が同118.2%と大きく上昇。年明け以降もさっぽろ雪まつりや中華圏の春節休暇があり、順調な回復が続いている。
ふっこう割は国が81億円、道が2億円を措置し、国内客の宿泊や旅行に最大50%、訪日客に同70%の支援をするもので、2月末までの予定で実施された。2月までに全額が交付され、3月にずれ込んだ一部商品を除き、ほとんどが執行済みとなり、早期の観光回復をけん引した。
全国からの支援、道や道内市町村、観光関係者による国内外へのプロモーション活動、海外メディアやインフルエンサー、旅行会社の招へいなどの取り組みと相まって、観光客の宿泊延べ数は平時の状態に戻ってきている。ただ、4月は観光需要が落ち込む時期であるとともに、回復をけん引したふっこう割が終了し、その効果の反動を懸念する声がある。
このため道や北海道観光振興機構は、回復した北海道観光が再び落ち込むことのないよう、旅行者に抽選で商品券などを贈る春季のキャンペーンを航空会社、JRなどと連携して展開する。
さらに各種媒体による観光PRや国内外でのプロモーションなど、オール北海道で観光回復の持続と需要喚起に向けた集中的な取り組みを進めることにしている。