東日本大震災の被害や福島第一原発の影響がないにもかかわらず、教育旅行のキャンセルが続出している福島県の会津地方。中止を決める学校が多い中、埼玉県の松伏町立松伏中学校の2年生130人が5月26、27日に南会津町を訪れ、宿泊体験学習を実施した。地元では「正しいデータを元に客観的な判断で来てくれた。本当にありがたい」と歓迎した。
南会津町での2日間、イチゴの育苗や行者ニンニクの草むしり、キノコの植菌などの自然体験を行ったほか、地元の農家の指導のもと郷土料理の「はっと」や笹巻なども手作り。生徒たちからは「自然が多く、来てよかった。大人になったらまたスキーで訪れてみたい」「難しいけど楽しかった」といった声が聞かれた。
松伏中では、南会津町住民との交流を9年前から続けている。1年次にスキー教室、2年次に宿泊体験学習を実施し、3年次には南会津町の農家や自然体験活動インストラクターが松伏中学校を訪問し、そば打ち体験などを行う。今回は中止も考えたが、「震災の被害を受けた福島を元気に、長年続いている会津高原との絆を大切に」との思いから実施を決めた。
東日本大震災が起き、会津地方への教育旅行は風評被害で激減。福島県観光物産交流協会の観光部教育旅行担当、関根文恵氏は「今年、受け入れたのは数校だけ。福島県にあるだけで避けられてしまう」と嘆く。2年後、3年後のキャンセルも出ているという。
松伏中に予定通り来てもらうため、受け入れ団体の会津高原自然学校では、中学校の教員に加え、保護者にも安全性を訴えた。南会津町は福島県でも南西の端にあり、地震による人的・住宅被害はまったくないこと、福島第一原発から約130キロ離れていることなどを文書で説明し理解を得た。
南会津町での宿泊体験学習を終え、松伏中の板橋昇校長は「本来の目的である自然体験がしっかりとできたし、現地の人が風評被害で困っていることも分かった。子どもたちは、たくさんのことを学べたと思う」と話す。
関根氏は「来てもらうことが大事だ。こういう時だから福島に行こうという学校もあるので、学校への情報発信や訪問を強化するなど、できることを1つひとつやっていく」と地道に取り組む。来校実績を積み重ねることで、風評被害を吹き飛ばしたい考えだ。
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