通常国会に改正案提出へ
厚生労働省が「旅館業法の見直しに係る検討会」(座長=玉井和博・立教大学観光研究所特任研究員)を昨年8月に設置し、有識者などのメンバー9人がこれまでその在り方を議論してきた。12月27日に第7回の検討会を予定していたが、1月(予定)に延期。引き続き議論が進められる。
懸案となっているのは旅館業法の第5条だ。旅館・ホテルの宿泊拒否制限を定めたもので、営業者が宿泊を希望する人を拒否できるのは(1)宿泊しようとする者が伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき(2)宿泊しようとする者がとばく、その他の違法行為または風紀を乱す行為をするおそれがあると認められるとき(3)宿泊施設に余裕がないとき、その他都道府県が条例で定める事由があるとき―に限られている。違反した場合は50万円以下の罰金が科される。
旅館・ホテル関係者が問題にするのは(1)の条文で、法律では、新型コロナウイルス感染症がまん延する現在でも、疾病にかかっていることが「明らか」でない限り、事業者は利用をしようとする人の宿泊を拒否することができない。単にせきや発熱があるだけでは拒否をできず、他の宿泊客や従業員を感染のリスクにさらすことになる。
検討会のメンバーには利用者を受け入れる宿泊事業者側、施設を利用する消費者側の各団体の代表や有識者が参加し、それぞれの立場で意見を述べている。メンバー以外の事業者、消費者それぞれの団体関係者を呼んでのヒアリングも行った。
事業者側は自身の権利や安全性が担保されるように第5条を撤廃、もしくは改正するよう主張する。ヒアリングで日本旅館協会など旅館・ホテル団体は「『サービスの提供を拒否する権利』は勤労者を守るために営業者が保持する基本的権利。宿泊事業者以外のほぼ全ての業種において、この権利が制約されている例はない」と指摘。
一方、消費者側、特に難病や体にハンディキャップを抱える人々の団体からは撤廃や改正に慎重な意見を述べる。「難病患者にはさまざまな特性がある。患者への不利益や偏見、差別にならないよう、十分配慮されたものにしてほしい」と訴えている。
厚労省は会での検討の結果を受けて、今年の通常国会に法律の改正案を提出したい考えだ。