宿泊業界、訪日個人客増でギャランティーリザベーションの普及課題に


 宿泊予約客の無断不泊(ノーショー)に対して、旅館・ホテルがクレジットカード機能でキャンセル料を受け取るギャランティー・リザベーション制度。世界では常識という制度だが、日本では大手ホテルなど一部を除いて普及していないのが現状だ。全国旅館生活衛生同業組合連合会(全旅連)は5月27日、組織内に「ギャランティー・リザベーション検討委員会」を設け、日本での同制度普及に向けて議論を進めることになった。訪日外客、特に旅行会社を通さず宿を直接予約する個人旅行者が今後ますます増えることが確実視される中、同制度の早期の普及が宿泊業界内で求められている。

 全旅連ギャランティー・リザベーション検討委員会の委員長に就任した潘桂華氏は、東京・築地で「ビジネスホテルバン」を経営する。同ホテルでは国内からの宿泊予約に対しては、宿泊前日までに本人の利用の意思を確認する電話を極力入れるなどして、ノーショー対策を行っている。ただ、海外からの予約はEメールを通してがほとんどで、直前に本人に連絡を取るのは困難という。同ホテルでは海外からの利用客はまだ少ないというが、「今後増えてくるとノーショーの率が上がってくるのではないか」と懸念する。

 同ホテルではギャランティー・リザベーション制度をまだ導入していない。ノーショーの場合のキャンセル料(宿泊料金の100%)を予約客に請求する権利はあるものの、“対お客さま”という心理的な問題や、請求作業に多大な労力をかけられないという物理的な問題もあり、深く追求できない状況だ。これが海外からの予約客になれば、追求は不可能に近い。

 東京・谷中で「旅館澤の屋」を経営する澤功氏は、この問題の研究を20年以上続けており、全旅連のギャランティー・リザベーション検討委員会の委員も務めている。「低廉な値段で日本旅館に宿泊し、日本文化を体験できる」と外国人観光客に人気の同館は、海外からの個人旅行者が利用の約9割を占める。同館では95年のアメックスを皮切りに、ビザ、マスターなどほとんどの大手カードとギャランティー・リザベーションに関する契約を締結。現在は外国人客の予約に際しては必ずカード番号を聞くなどのノーショー対策を行っている。

 「外客受け入れを始めた時、一番困ったのがノーショー。キャンセル料の請求書の書き方も分からず、泣き寝入りすることもあった」と澤氏。外客受け入れを始めた当時は年間50〜60件のノーショーがあったという。だが、ギャランティー・リザベーション制度を導入し、予約に必ずカード番号を聞くようになった02年以降は年間4〜5件程度しかノーショーが発生していない。

 ただ、制度の適用は海外発行のカードに限り、日本人客には対応できなかったり、当日午後6時までに連絡があればキャンセル料を請求できない(標準宿泊約款では宿泊料の80%を受け取れる)など、旅館側にとっては不利ともいえる付帯条項が付いているという問題点も残っている。

 ギャランティー・リザベーション制度を導入している国内の旅館・ホテルは、一部の大手ホテルを除いてほとんどないといわれる。前出の旅館澤の屋は稀なケースといえる。なぜ普及しないのか。

 大手カード会社のほとんどは、名称は異なるものの、ギャランティー・リザベーションに関する制度を確立している。ただ、旅館・ホテルが単独で制度の利用を申し込んでも、認められないケースが多いという。(1)ノーショーで旅館・ホテルからキャンセル料の請求があった際、予約客のサインがないため、宿泊に関する契約が本当にあったかどうか確かめられない(2)ノーショーが日本人の場合は、キャンセル料が正当に引き落とされても、カード会社にクレームが来る恐れがある。キャンセル料の概念が浸透しておらず、日本の商習慣、風土になじまない──などが理由とされる。

 「『キャンセル料は払うべきもの』という、消費者に対するキャンペーンを宿泊業界として行う必要がある」と前出の潘氏。澤氏も「カード会社に対して宿泊業界ぐるみで制度の重要性を訴える必要がある。世界の個人旅行者が日本全国に行き始めた今、業界にとってどうしても必要な制度だ」と訴えている。

 
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